どら増田のオリ熱魂!第16回・ディクソン
オリックスの“外国人エース”ブランドン・ディクソンが今月5日、新たに2年間の契約を締結した。
日本人選手資格の取得を目標にしているディクソンだけではなく、日本を「自分のホーム」と思っているディクソンの子供たちにとっても嬉しいニュースだったようで、契約締結会見では「家族全員とてもエキサイティングな気持ち」と笑顔で語っていた。
そのディクソンには、どうしても成し遂げたいことがある。それは、来日5年目で未だに達成できていない二桁勝利だ。
▼ディクソン 年度別成績
13年:23試合(8勝 8敗)防御率2.77
14年:26試合(9勝10敗)防御率3.33
15年:20試合(9勝 9敗)防御率2.48
16年:27試合(9勝11敗)防御率4.36
17年:21試合(8勝 9敗)防御率3.42
※9月27日現在
来日初年度の2013年は9月に3勝を挙げたが、その後、怪我で離脱した2015年を除いた3年間は、夏場から秋にかけて勝てなくなり、二桁勝利のチャンスを逃してきた。
ディクソンに近しい渉外担当者は「夏が苦手という話は聞いたことはないし、“たまたま”が重なっているとしか言いようがない」と語り、「実際、夏場にいいピッチングをして援護点が得られなくて負けた試合もある」と続けた。
まずは二桁に王手を
「毎年10勝を目指してはいるけど届いていない。目標に到達できれば、家族もチームもファンの方もみんなが幸せになれると思うので、みんなのためにも何とか頑張りたい」
その言葉が表すように、ディクソンの二桁勝利への思いは強い。しかし、最近のディクソンを見ているとストライクとボールがハッキリとしており、キャッチャーも配球に苦心している様子がうかがえる。
9月に入ってから4試合に登板しているが、5回を投げ切ったのは1度だけ。直近2試合は4回をもたずに降板している。二桁への思いが強すぎるのか、福良淳一監督からも「ああいうディクソンは見たことがない」という言葉が漏れるようになってきた。
残りの試合数(9試合)を考えると難しい状況ではあるが、まずは次回登板で8月11日以来の9勝目を挙げ、黒星が先行している星取りを五分に戻すと共に二桁に王手をかけたいところだ。
ファンへの感謝と思い
ディクソンは、ファンクラブの写真撮影会やサイン会にも頻繁に参加している印象が強い。広報担当者も「コットン(ディクソンの愛称)は自分から行くよって言ってくれる」と話すように、ファンの重要性を十分に認識している。
「ファンなしでの活躍はないと思っている。本当はファン全員にサインをしてあげたいけど、そういうわけにもいかないので、時間が許す限りはファンの方にサインをしていきたい。できる限りやっていきたいと思う」
ディクソンは「当たり前のことをやっているだけさ」とでも言いたげな表情を浮かべながら、ファンサービスに対する熱い思いを語ってくれた。
さらに、「日本のファンの方は選手というよりも、野球に対する情熱が凄い。選手が野球に対する情熱を持っているのは当然だけど、ファンの方も同じぐらいの情熱を持って応援してくれる。みなさんの声援から感情は伝わってくる。勝ったときにはみんなで喜んで、負けたときはみんなで悔しい思いをしている。それを凄く感じている」とも語り、ファンの気持ちを察していることがうかがえる。。
当たり年の裏にディクソンあり!?
今年は6月1日のヤクルト戦(京セラD)で愛娘のナラちゃんをヒーローインタビューの舞台に上げている。ナラちゃんの名前は関西の奈良からつけられた。日本人選手資格が得られるようになるまで、日本でプレーしたい気持ちも強い。
「家族もナラも日本が大好きだし、自分自身も大好き。このチームも大好きなので、なるべく帰ってきたいという思いはある。自分のホームだと思っているし、野球を通じて日本の文化に触れていく中で、日本が心地よくなってきたというのもある。心地よい環境の中で自分の好きな野球をやりたい」
日本の野球に心地よさを感じる一方で、その厳しさについてもしっかり心得ている。今季からチームに加入したステフェン・ロメロやクリス・マレーロには「日本とアメリカは全く違う。まず日本に来て全てに耳を傾けてみようと伝えた。日本で成功するには日本に適応しなきゃダメだと感じているので、その辺りの話をした」とアドバイスを送っている。
新外国人選手へのケアは、帰国が発表されたブレント・モレルも尽力していたが、ディクソンも積極的にコミュニケーションを図っていた。今年の新外国人選手が“当たり”と言われている陰には、ディクソンが日本文化から学んだ“おもてなし”の心が生かされていたのかもしれない。
「いつも球場で皆さんの声を聞くのを楽しみにしている。もちろんゲームでは一生懸命プレーするし、皆さんの応援なしでは戦えないと思っている。これからも一生懸命応援をしてもらって、しっかり自分の背中を押してもらいながら、皆さんのために頑張りたい」
夢の二桁勝利達成にはファンの後押しがもっと必要なのかもしれない。CS進出は消滅してしまったが、まだ達成することで喜べる記録があることを忘れずに、ファンには選手の背中を最後まで押してもらいたい。
取材・文=どら増田(どらますだ)