一線での活躍が目立つ近年の“出戻り”選手たち
今季限りで楽天を退団する松井稼頭央の獲得を西武が検討していると報じられた。楽天には2011年から在籍した松井。当初は遊撃、その後は外野のレギュラーとして活躍していたが、ケガや打撃不振、若手の台頭もあって昨季から出場機会は激減。今季のスタメン出場はわずか20試合だった。その松井に、古巣がコーチ兼任での獲得に動いているという。
過去にも、かつて在籍したチームに復帰した選手は少なくない。ただ、古巣に復帰するとなると、当然、選手としてのピークを越えていることが多く、いわば過去の貢献に対する温情もあっての獲得という意味合いも。結果的に、復帰後は目立った活躍ができないまま球界を去るケースが目立った。
だが、近年の“出戻り”選手たちのなかには、そのケースに当てはまらない選手も多い。昨季、広島を25年ぶりのリーグVに導いた立役者は、そろって2015年にチームに戻ってきた投打の大黒柱。メジャーの高額オファーを蹴って古巣に復帰した黒田博樹、大減俸を飲んででも出場機会を求めて広島に戻った新井貴浩のふたりだ。彼らの働きなくして悲願のペナント制覇はなかった。
“レジェンド”の復帰は選手も歓迎!?
阪神の藤川球児もそういったタイプの“出戻り”選手だろう。メジャー挑戦、独立リーグを経て2016年に阪神に復帰。昨季は防御率4.60と不安定な投球も目についたが、今季は“60試合登板クインテット”に次ぐ52試合に登板して防御率2.22。かつて球界最高の守護神として君臨した男が、場面を問わずに課せられた役割を果たし、球界トップクラスの救援陣を支えた。岩崎優、石崎剛ら若き中継ぎ投手にとっては、藤川から学んだことも多かったはずだ。
松坂世代を代表する投手・和田毅(ソフトバンク)も間もなく37歳。ベテランの域に入っているが、2016年、5年ぶりにソフトバンクに戻ってくると、いきなり最多勝と最高勝率の個人タイトルを獲得。今季は左肘の手術もあって先発は7試合にとどまったが、4勝無敗、防御率2.49という安定感はさすがとしか言いようがない。
今年、42歳になった松井に、全盛期の働きを期待するのは現実的ではないかもしれない。しかし、コーチ兼任ということならば、長きにわたって一線で活躍してきた男の経験は大いに魅力的だ。西武の野手を見れば、かつての松井のポジションである遊撃には1年目の源田壮亮、外野にも外崎修汰や金子侑司ら若い選手がそろう。
チームとしてはもちろん、彼ら若手も松井の古巣復帰は大歓迎にちがいない。“レジェンド”から教えてもらいたいこと、盗みたいことはいくらだってある。辻発彦監督体制になり、盗塁が激増するなどプレースタイルが様変わりし、4年ぶりにAクラス入りを果たした西武にとって、松井の獲得は2008年以来のリーグ制覇に向けた大きな補強になるはずだ。
文=清家茂樹(せいけ・しげき)