コラム 2017.11.08. 11:00

松坂大輔はどこへ?「衝撃の10代、栄光の20代、苦悩の30代」

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ソフトバンク退団が決まった松坂大輔(C)KYODO NEWS IMAGES

松坂世代


 「ホークスには同級生の(和田)毅、スギ(杉内)、(新垣)渚が揃っていて、アイツらのことを羨ましいなぁと思ったこともありました。ライオンズとホークスは同じ宮崎でキャンプをしてましたから、変装してホークスのキャンプに潜り込んでやろうかと計画したこともありましたし(笑)」

 2008年3月に発売された『松坂大輔 メジャー挑戦記』(石田雄太著/集英社)で、当時レッドソックスに所属していた松坂大輔の発言である。この頃からホークスには親近感を持っていたのかと意外な気もした。皮肉にも松坂が14年オフにソフトバンク入団を表明した時には、和田はシカゴカブス、杉内は巨人、新垣はヤクルトと全員チームから去ったあとだったが…(和田は16年から復帰)。

 少し前まで「俺、野球で言ったら松坂世代です」なんて初対面の人の自己紹介を何度も聞いたことがある。合コンじゃ絶対モテなそうなその挨拶も最近はめっきり耳にすることはなくなった。

 3年契約が終わり、今季限りでソフトバンクを退団することが決まった背番号18。日本復帰後3年間で1軍登板はわずか1試合。「松坂世代」というひとつの時代の終わりの象徴として語られるニュースだが、そのキャリアを振り返ると、やはり横浜高校時代の98年甲子園春夏連覇から09年の侍ジャパンWBC二連覇まではまるで漫画のように完璧だ。


球界をけん引したスーパースター


 先日、資料の1998年発売の野球雑誌をまとめて見る機会があったが、「横浜ベイスターズ38年ぶりの日本一」と「甲子園の怪物・松坂」は平成10年の二大トピックスだった。

 野球メディアの王道・週刊ベースボールの表紙では98年9月7日号でプロ野球選手を押しのけ甲子園を沸かせた『驚愕の鉄腕』のキャッチコピーとともに登場。西武入団後の99年は『恐るべき10代』『怪物、完全解剖』『怪物、参上!』や契約更改の『破顔一昇』も合わせると、なんと年間9度も表紙を飾っている。

 とにかく松坂を出しとけば雑誌も売れる、野球界にカネの雨を降らせるスーパースター。甲子園決勝戦でノーヒットノーラン達成。プロ入り即ルーキーイヤーに16勝を挙げ最多勝獲得。そんな圧倒的な実力に加えて松坂にはファンやマスコミを喜ばせるコメント力があった。

 ロッテのエース黒木和宏との白熱の投げ合いに敗れ「必ずリベンジします」と口にした6日後の再戦で本当に3安打10奪三振のプロ初完封勝利。オリックスの天才イチローを3打席連続三振に斬って取り「自信から確信に変わりました」なんてお立ち台で笑ってみせるハートの強さ。オフには“リベンジ”が流行語大賞を受賞した。その存在は野球界を飛び越え、ひとつの社会現象だったわけだ。

 今思えば、80年9月生まれの松坂は猛スピードで世紀末の日本を駆け抜けてみせた。17歳の夏に甲子園のヒーローになり、18歳の夏には圧倒的な実力でプロ野球界を席巻し、19歳の夏は6つ年上の人気女子アナとフライデーされ、駐車違反の球団広報身代わり出頭がバレて、シドニー五輪で日の丸を背負いエースに。10代の青い春、凄まじいドライヴ感だ。

 プロ入り後3年連続で最多勝に輝き、まさに西武ライオンズの、いや名実ともに球界を代表する大エースに成長した06年オフのポスティングでは60億円の値が付いて年俸と合わせて“100億円右腕”と呼ばれ、レッドソックス移籍後は2年間で33勝を上げる活躍を見せた。

 パセティックでロマンチック。もはや嫉妬する気にもなれないビューティフルな野球人生。ついでに奥さんは元美人女子アナ。もちろん国際大会の大舞台にも強く、日本代表の二連覇に貢献したWBCの投球成績は、06年が3勝0敗で防御率1.38、09年も3勝0敗の防御率2.45。2大会計6試合に先発して6勝0敗の安定感である。06年はキューバとの決勝戦、09年はアメリカとの準決勝の先発マウンドを託される等、00年代の「日本の絶対的エース」と言えばダルビッシュ有でも田中将大でもなく間違いなくこの男だった。


あれから20年…


 そんな時代もあったよね…なんつって松坂が投げた一連のビッグゲームのあらゆるシーンを思い出せる人も多いのではないだろうか。そのキャリアを贔屓チームの垣根を越え全野球ファンが共有している選手は、00年代ではイチロー、松井秀喜、松坂大輔の3名だけだと思う。なぜなら、彼らの野球人生は個人というより、ゼロ年代の日本野球史そのものだからだ。

 松坂は日米通算164勝を挙げているが、内154勝は20代までに記録したものだ。つまり、度重なる故障に悩まされた30代に入ってからの7年間でわずか10勝のみ。…と書いていて驚いたが、我々は09年春のWBCからもう8年半近くベストな状態での松坂の投球を見れていない。

 正直、最近の背番号18は見ていて辛かった。3年12億円の高額年俸、周囲の過剰な注目と期待。松坂は怪我と言うより、自身の「偉大な過去」に追われているように感じられたから。いつの時代も、ベテランアスリートは全盛期の自分と戦うハメになる。

 衝撃の10代、栄光の20代、苦悩の30代。早いもので、来年8月で、あの98年夏の甲子園から20年が経つ。その時、38歳を目前にした松坂大輔はどこのチームのユニフォームを着ているのだろうか?


文=中溝康隆(なかみぞ・やすたか)

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