どら増田のオリ熱魂!2017年ドラフト特別編
オリックスは昨年までの4年間、ドラフト1位の単独指名に成功していた。しかし今年は、競合覚悟で社会人No.1の呼び声の高いJR東日本の左腕、田嶋大樹を指名。予想通り西武との競合になったが、福良淳一監督が交渉権を見事に引き当て、抽選の連敗を「11」でストップさせた。
これで昨年の山岡泰輔に続いて社会人No.1ピッチャーの獲得に成功したことになる。今年のドラフトについて、中川隆治アマスカウトグループ長に話を聞いた。
福良体制での優勝を目指して
中川アマスカウトグループ長は、「全くなかったということはない。清宮、安田(履正社)、そして甲子園で活躍した中村(広陵)も候補には挙がっていた。でも、僕たちは福良監督で勝ってもらいたい。今年チームが優勝していればスター性のある高校生を指名したかもしれない。ただ、状況を考えたときに、1位と2位は即戦力のピッチャーになった」と主張。
今年の高校生ビッグ3を評価しつつも、福良体制で優勝を目指すためには、即戦力の投手が必要という結論に至ったことを明かした。
中川スカウトグループ長に限らず、球団スタッフからは「福良監督を胴上げしたい」という言葉が口をそろえて出てくる。今年のドラフトに関して福良監督は「編成に任せている」とコメントしていたが、今回の話を聞き、あらためて監督と球団の信頼関係の強さを感じた。
即戦力として期待がかかる上位指名組
今回のドラフトは1位から3位までが社会人の選手となっているが、高卒社会人から最短でドラフトにかかった田嶋はまだ21歳と若い。しかし、中川スカウトグループ長は「田嶋は山岡と同じで、自分を持っている。プロでも心配することはない」とプロ1年目からローテーション投手として活躍したドラ1の先輩を引き合いに出し、その実力と人間性を評価。さらには「田嶋が活躍することで、同い年の鈴木優や齋藤綱記も刺激を受けてもらいたい」とチームに及ぼす相乗効果にも期待を寄せた。
また、ドラフト2位の鈴木康平(日立製作所)に関しても「まだまだ伸び代がある選手。勝負球があるので、先発として考えている」との構想を明かし、他球団が1位指名してもおかしくなかった逸材の今後を楽しみにしていた。
3位指名の福田周平(NTT東日本)については、「都市対抗野球でMVPを獲ってますが、チーム状況を考えても、ショートを守れるというのは大きい。肩も強いし、西野(真弘)とはまた違ったタイプ」との見解を示した。ちなみに、福田は明治大学時代、山崎福也とチームメイトで仲が良かったとのこと。山崎福も「びっくりしました。嬉しいですね」と福田の指名を喜んでいた。
山本2世に正捕手候補!?
さらに、4位の本田仁海(星槎国際湘南高)は「今年の高校生のピッチャーの中ではハイレベルな選手。今シーズンの最後に出て来た山本由伸みたいになる可能性もある」と評価。デビュー戦で152キロを計測し、高卒1年目で初勝利を記録した昨年のドラ4・山本の名前を出しつつ、「しっかり育てて長く活躍してもらいたい」と今後を見据えた。
5位の西村凌(SUBARU)については、「SUBARUでは正捕手がいたので、外野を守っていたが、高校も社会人もキャッチャーで入っているし、同い年の若月(健矢)や(伊藤)光と競争させるという意味もある。あと彼は肩が強いだけじゃなく脚力もあるので、足も速い。バッティングも魅力」とコメント。春季キャンプから打撃面でアピールできれば、若月や伊藤のライバルとなる可能性もありそうだ。
その他の注目選手を訪ねると、6位指名の西浦颯大(明徳義塾高)、7位指名の廣澤伸哉(大分商業高)に加え、育成1位の稲富宏樹(三田松聖高)の高校生野手3人の名前が挙がった。
「西浦と廣澤は鍛えがいがある。西浦は走攻守三拍子そろった外野手。廣澤はショートが守れる。宗(佑磨)や岡崎(大輔)にとっても後輩の突き上げは良い競争になる」、「稲富は病気(紫外線アレルギーを発症も克服している)もあったが、キャッチャーで右投げ左打ちはウチにいない。チャンスは大いにある」と、次代のオリックスを担う存在として期待を寄せた。
大満足95点のドラフト
今年のドラフトは大学生を指名しなかったが、高卒社会人を指名したこともあり、平均年齢は21歳(育成は除く)とバランスよく指名できた印象。中川アマスカウトグループ長に今年のドラフトを採点してもらうと「そりゃ100点ですよ。でも…100点じゃ満足したことになってしまうので、95点にします。残りの5点は指名した選手が活躍することで埋めてもらいたい」と明るく今年のドラフトを総括した。
最後に、スカウトから見た選手への思いを訪ねると、中川アマスカウトグループ長は熱い言葉の中に優しさを交えながら、次のように話してくれた。
「ウチには熱意のあるスカウトが揃っている。自分の担当した選手じゃなくても、みんなが思いを持っている。これからプロに入って、喜びも味わうだろうし、壁に当たることもあるでしょう。でも僕らには、プロに入ってからもバックアップするという気持ちがあるので、君たちをバックアップしてくれる人間はたくさんいるんだよと言ってあげたい」
2014年頃からオリックスはドラフト戦略を見直し、即戦力と将来性のある選手をバランスよく指名してきた。また中川氏の話からもわかるようにチーム状況に合わせて、時代に流されることなく独自のドラフトが出来ているのも事実だ。
9日の西浦を皮切りに仮契約もスタートし、背番号も発表されていく。来月の合同入団会見を経て、年明けには入寮と新人合同自主トレ。そして2月からは春季キャンプと、あっという間にシーズンは始まる。決して平たんな道のりではないが、彼らが一軍の舞台で活躍する姿を、楽しみに待ちたいと思う。
取材・文=どら増田(どら・ますだ)