先発適性の高さも示した今季
中日のセットアッパー・又吉克樹が来季に向けて先発として調整していくことが報じられた。起用法について「監督、首脳陣の方が決めること」と語りながらも、先発への強い意欲を感じさせる。
今季の又吉は、春季キャンプでは先発要員として調整するも、チーム事情により中継ぎとして開幕を迎えた。その後、4月13日のヤクルト戦で一軍初先発。以降、6月6日のロッテ戦でプロ初完封を果たすなど、先発として9試合61回2/3を投げて3勝0敗、防御率2.63という見事な成績を残し、適性の高さを示してみせた。
しかし、6月24日の巨人戦からは再び中継ぎに転向。広いナゴヤドームの特性を生かし、中継ぎの陣容を厚くして守り勝つ野球を目指すための配置転換だったのだろう。確かに、又吉は中継ぎとしても41試合48回1/3で5勝3敗21ホールド、防御率1.49という素晴らしい数字を残しており、チームの中継ぎ陣には欠かせない存在となった。ただ、どこかで「もったいない」と感じていたファンも少なくないのではないか。
【先発登板試合成績】
ヤクルト戦:- 8回(128球)2失点
DeNA戦 :- 7回2/3(138球)2失点
ヤクルト戦:☆ 7回(112球)無失点
広島戦 :- 5回( 82球)5失点
ヤクルト戦:- 6回(118球)2失点
広島戦 :☆ 7回( 94球)1失点
ヤクルト戦:- 7回(111球)2失点
ロッテ戦 :☆ 9回(125球)無失点
日本ハム戦:- 5回( 94球)5失点
“高津のシンカー”を習得中
今季、中日の先発陣は厳しい成績に終わった。中継ぎでの5勝を含む8勝を挙げた又吉がチームの勝ち頭。以下、大野雄大が7勝、バルデスとジョーダンの両外国人が6勝、鈴木翔太、小笠原慎之介が5勝と続く。中日の先発防御率は4.10。最下位・ヤクルトの4.16とほとんど差がないリーグワースト2位の数字である。
バルデスの退団もあり、先発陣の立て直しは急務。本来なら、大野や吉見一起が先発陣を引っ張り、若い鈴木、小笠原の飛躍に期待したいところ。しかし、きっちり結果を残した又吉を先発起用するのも大いに“アリ”だろう。
とはいえ、又吉にも明確な課題がある。左打者に対する投球だ。今季の又吉は、右打者は被打率.186と圧倒したものの、左打者には被打率.254と打たれている。又吉の球種別投球割合を見ると、ともに力のある直球とスライダーが8割以上を占め、残りはシュートが1割程度、ごくたまにシンカーという具合だ。左打者に対する明確な武器がないという見方もできる。
その又吉は、来季に向けてシンカーのレベルアップを図っている模様。かつてヤクルトなどで活躍した高津(臣吾/現ヤクルト二軍監督)の代名詞だった落差のあるシンカーの習得を目指しており、これをモノにできれば左打者に対する武器になることは間違いない。当然、150キロを超える直球との緩急を生かすこともできる。又吉の先発再転向、そして先発投手としての“大成”はシンカーが大きな鍵を握っているのかもしれない。
文=清家茂樹(せいけ・しげき)