思いがけない“即決”劇
2018年から戦いの舞台をアメリカへと移す大谷翔平。全米を巻き込む大争奪戦のなか、ヤンキースやドジャースといった日本人に馴染みのある球団ではなく、数多くの選択肢から新天地に選んだのはロサンゼルス・エンゼルスだった。
エンゼルスを選んだ理由については、「縁があると感じた」「感覚的なもの」といった独特のワードで語るに留まり、あまり核心について語ろうとしなかった大谷。もちろん、その通りフィーリング的な要素も大きかったであろうが、カリフォルニア州南部の温暖な気候や、指名打者制度の有無なども加味した結果ということなのだろう。
また、投打の“二刀流”を目指している大谷にとって、打者の視点ではマイク・トラウトとアルバート・プホルスというスーパースターが在籍していることも大きかったはずだ。早くも将来の殿堂入りが期待されるほどの選手を間近で見て、学ぶことができるというのは、「打者・大谷」を成長させるうえでこれ以上ない財産となるに違いない。
一方、投手としての視点から言うと、マイク・ソーシア監督が「ローテーション6人制」に対して柔軟な考え方を持っていることが何より大きかったように思う。自らの才能をフル活用しようとしてくれる職場、それも生きた教材に恵まれた環境が用意されているとなれば、今回の“即決”もうなずける。
大谷を助ける2人の名手
こうした環境面でのバックアップはもちろんのこと、グラウンド上のプレーで大谷をサポートしてくれる存在がいるというのも、エンゼルスというチームの心強いポイントだ。
今季のチーム守備率.986は、メジャー全体でみても7番目と高い安定感を誇ったエンゼルスのディフェンス。特に捕手と遊撃手という守りの要と言えるポジションに“守備の達人”を抱えているのは大きい。
遊撃のレギュラーを張るアンドレルトン・シモンズは、メジャー屈指の名手として知られる男。守備力を表す指標のひとつであるUZR(=同リーグの平均的な選手が守る場合に比べてどれだけの失点を防いだか)で、今季は15.5という圧巻の数字をマーク。2位のホセ・イグレシアス(タイガース)が8.6であることから、いかにシモンズの守備力がずば抜けているかがお分かりいただけるだろう。
ゴールドグラブの常連であり、ここ4年で3度もメジャーの最優秀守備選手に選ばれたまさに守備の達人。大谷もきっと幾度となくピンチを救ってもらうことだろう。
もう一人、エンゼルスの守備の要といえば、捕手のマーティン・マルドナドだ。
今年31歳にしてようやくレギュラーを掴んだ遅咲きの苦労人は、捕手として両リーグ最多の137試合に出場。失策数はわずか2個だけという堅守でエンゼルスの投手陣を支えた。
安定した守備に加え、強肩も大きな魅力のひとつ。盗塁を企図された回数は75回と多かったが、盗塁阻止率は.387(75-29)と健闘。これは被盗塁企図数が50以上あった捕手34名中4位という好成績である。
まさに最高の環境が揃うエンゼルス。大谷翔平の挑戦が今からたのしみだ。
文=八木遊(やぎ・ゆう)