どら増田のオリ熱魂!第23回・秋季キャンプ2017
「今年は投手、野手ともにかなりの収穫があったので、この中から台頭して欲しい」
オリックスの福良淳一監督に秋季キャンプを総括してもらうと、充実した表情を浮かべながら冒頭のコメントが返ってきた。
オリックスの秋季キャンプは、11月2日から同17日までの16日間(※その間に休日が2日)に渡り、毎年使用している高知市東部野球場で行われたが、今年は大きな室内練習場が完成。雨天時も東部野球場の関連施設を使用できるようになった。
そのため、昨年までは雨が降ると、よさこいドームでウェイトアップをしてから、投手陣はタクシーで東部野球場に移動し、ブルペン入り。投手と野手が離れた別々の練習場を使わざるを得なかったが、室内練習場の完成により、効率的な練習が可能になった。
秋季キャンプの最重要課題
高知のタクシー運転手が「今年は知っている選手が少なく、ファンの方も少ないですね」と話していたが、今オフの最重要課題は“中堅と若手の底上げ”。今回、初日から高知入りした選手は次の22名だった。
【投 手】吉田一、青山、小林、山本、澤田、黒木、金田、赤間、山崎颯、鈴木優、大山、榊原※
【捕 手】伏見、若月
【内野手】西野、宗、大城、岡崎、坂本※
【外野手】駿太、杉本、張※
昨年はT-岡田、伊藤光、一昨年は小谷野、糸井(現・阪神)が参加していたが、今年は期待の若手と、今シーズン奮闘・苦悩した中堅が選出された印象。その後、若月が侍ジャパンに急遽選出されたため飯田を招集し、守備練習中の怪我により帰阪した宗に代わり、園部と根本をそれぞれ舞洲から呼び寄せた。(※は育成選手)
新首脳陣も活躍!?
今回のキャンプから、復帰を果たした高山投手コーチと藤井打撃コーチが参加。ファームからも小松投手コーチや、新任の川端育成コーチらが参加していた。今回参加した選手は、高山コーチや藤井コーチから初めて指導を受ける選手がほとんど。そんな選手の口からは「今まで知らなかったことを教えてくれる」「とてもわかりやすい」といった好意的な声が多く聞かれた。
ブルペンで山崎颯一郎が小松コーチと変化球の練習をしていたとき、隣でノックバットを持ちながら、小林慶祐のフォーム改造に取り組んでいた高山コーチが突然語気を強め、「颯一郎!しっかりやれよ!」と一喝。山崎颯はこれに発奮したのか、小松コーチとの変化球ラリーの精度が上がっていく。
メイングラウンドでは、藤井コーチが西野真弘や駿太に細かいアドバイスを送っている。昨年までソフトバンクで2軍の打撃コーチを務めていたこともあり、若手にはファーム時代にベンチで感じていたことを話しながら指導していた。
将来性抜群の高卒ルーキー
11月15日に行われた韓国LGツインズとの練習試合では、高卒ルーキーの根本薫が3安打2打点の活躍でアピールに成功。負傷した宗に代わり、ウィンターリーグ出場の切符も手にした。
球団関係者はドラフト指名時から「ファームで投手か野手かどちらが適正か見極める」としており、野手としての起用になれば、T-岡田に続く左投げ左打ちの選手として面白い存在になるだろうと話していた。
試合後に根本は「野手に転向することになって、とことんやってやろうという気になりました」と心境の変化を語り、藤井コーチと米村コーチから「バッティングの重心について教えてもらったことをキャンプでやってきたので、結果が出て良かった。持ち味である身体能力を活かせるように頑張ります」と力強く語った。
福良監督も「それ(重心の話)を本番で出来るんだから大したもの。根本の身体能力はかなり高いと思う」と大きな期待を寄せている。
仏の福良
15日のLGツインズ戦は、6投手によるリレーでソロホームランによる1失点のみ。与四球も榊原が与えた1つのみと、指揮官がシーズン中から苦言を呈してきた与四球の部分に改善の兆しが見られた。
試合後、福良監督は「(ソロを被弾した)澤田はへばっていたけど(笑)。他の選手は良かったんじゃないですか。小林は問題ない。(鈴木)優は何かひとつ決め球があれば上でも使える。(山本)由伸は素晴らしい」と、登板した投手陣に高評価を与えた。
「ウチには楽しみな原石がたくさんあるので、しっかりと磨いてあげたい。来年は期待に応えられるように頑張ります」
キャンプ終盤、監督は常に“仏”の福良だった。それは選手の成長に手応えを感じていたことの表れでもある。
最終日の打ち上げの挨拶は、キャンプ参加選手の中ではプロとしてのキャリアが最長となる7年目の駿太が務め、「来年はここにいるメンバーが中心になって優勝争いをしましょう」と意気込みを語った。一体何人の選手がこの中から戦力として台頭していけるのか――。まずは2月から始まるキャンプメンバーの発表を心待ちにしたい。
取材・文=どら増田
写真=舩橋諄