“打たれた方”に注目…
プロ野球2017年シーズンの本塁打王と言えば、セ・リーグが中日のアレックス・ゲレーロ、パ・リーグはソフトバンクのアルフレド・デスパイネ。ともに35本塁打を記録し、初のタイトルを獲得した。
このように本塁打を“打った方”のことは話題になるものの、“打たれた方”にフォーカスが当たることはあまりない。ちなみに、昨季の被本塁打王は、セ・リーグが中日の小笠原慎之介、パ・リーグはオリックスの金子千尋と日本ハムの有原航平が21本で並んだ。
中日は本塁打王と被本塁打王を両方輩出したことになるが、なかでも珍しいのが不名誉な被本塁打王の記録。セ・リーグの過去の被本塁打王を振り返ってみると、以下のようになる。
【過去10年のセ・リーグ被本塁打王】
2016年:小川泰弘(ヤクルト/22本)
2015年:小川泰弘(ヤクルト/18本)
2014年:石川雅規(ヤクルト/20本)、大瀬良大地(広島/20本)
2013年:三浦大輔(DeNA/26本)
2012年:三浦大輔(DeNA/15本)
2011年:石川雅規(ヤクルト/18本)
2010年:清水直行(横浜/26本)
2009年:三浦大輔(横浜/28本)
2008年:三浦大輔(横浜/22本)
2007年:高橋尚成(巨人/21本)、石井一久(ヤクルト/21本)、青木高広(広島/21本)
ご覧のように、最多はヤクルトと横浜・DeNAの5名。やはりと言うべきか、神宮球場や横浜スタジアムといった比較的本塁打の出やすい球場を本拠地にしているチームの投手の名前が多くなっている。
西本以来で28年ぶり…
そんな中、今年はナゴヤドームという広い球場を本拠地にしている中日から最多被本塁打投手が誕生した。
ここ10年出ていないどころか、中日の投手が被本塁打王になるのは西本聖(1989年/22本)以来で実に28年ぶりのこと。球団では小川健太郎(1969年/28本)、松本幸行(1975年/30本)、郭源治(1985年/38本)、そして西本につづく5人目となる。
ちなみに、過去の投手たちがプレーしていたのはナゴヤ球場であり、ナゴヤドームが開場した1997年以降では初。加えて小笠原の投球回数は119回で規定未到達。セ・リーグの規定未到達投手が被本塁打王になるのは、2007年の青木高広(広島/128.1回)以来のことだ。
【過去10年・被本塁打王の投球回数】
2016年:小川泰弘(ヤクルト/158回)
2015年:小川泰弘(ヤクルト/168回)
2014年:石川雅規(ヤクルト/165回)、大瀬良大地(広島/151回)
2013年:三浦大輔(DeNA/175.2回)
2012年:三浦大輔(DeNA/182.2回)
2011年:石川雅規(ヤクルト/178.1回)
2010年:清水直行(横浜/155回)
2009年:三浦大輔(横浜/195.1回)
2008年:三浦大輔(横浜/144回)
2007年:高橋尚成(巨人/186.2回)、石井一久(ヤクルト/166.2回)、青木高広(広島/128.1回)
被本塁打率の改善に期待!
小笠原の被本塁打の内訳を見てみると、21本中9本をナゴヤドームで被弾している。同球場での投球回数は67回となっており、被本塁打率は1.21。シーズン通算の1.59に比べるといい数字に見えるが、1試合あたり1本以上被弾しているというのは満足いく数字とはいえないだろう。
ちなみに、左のエース格である大野雄大は147.2回を投げて被本塁打は17本(被本塁打率1.04)だった。しかし、ナゴヤドームでは68回を投げ被本塁打は7。被本塁打率は0.93と、1試合平均では1本以下に抑えている。
小笠原も大野と同様に、最低でもホームでの被本塁打率を1点台以下に下げ、全体の数字も抑えていきたいところ。広い球場を本拠地にしているからこそ、思い切った投球ができるという精神面のゆとりはあるだろう。そこにしっかりと実績を加えていきたい。
球団史上ワーストの5年連続Bクラスに落ち込んでいる中日。上位浮上のためには、小笠原をはじめとした近年のドラフト1位投手たちの活躍が必要不可欠。鈴木翔太(2013年1位)、柳裕也(2016年1位)らとともに、若き力がローテーションに加われるかどうかという点は大きなカギを握っている。
そのためにも、プロ入り3年目を迎える小笠原の大きな改善点になるのが『被本塁打率』だ。頼れる一人前の投手に飛躍するために…。小笠原の進化した姿に期待したい。