規定打席という新人にとっての大きな壁
1月14日、日本ハムの新入団選手7人の歓迎式が鎌ヶ谷スタジアムで行われた。詰めかけたファンは約2800人。多くのファンのお目当てはドラフト1位ルーキー・清宮幸太郎だろう。その清宮は「三冠王を取りたい」と堂々宣言。ファンを大いに沸かせた。
将来的にその大きな目標を達成できるかはともかく、昨年のドラフト会議では1995年の福留孝介(阪神)と並ぶ野手最多タイの7球団が1位指名で競合したことからも、稀に見る逸材であることは間違いないだろう。
だが、そう簡単に新人、特に野手が好成績を残すことができないのがプロの世界。そして野手にとって、チームの主力であるかを測るバロメーターとなるのが規定打席だ。シーズン143試合制である現在の規定打席は443。そのハードルは高く、新人がそうやすやすと超えられるものではない。
打席数は、個人の力量のほか、チーム事情にも左右される。選手層が分厚いチームの場合、シーズンを通して新人を起用し続けることはまず考えられない。新人がいきなり規定打席に到達することは非常にレアなケースだ。
2008年から2017年までの過去10年において、規定打席に到達した新人はわずかに7人しかいない。以下は、彼らがプロ1年目に残した打撃成績である。
【直近10年で規定打席に到達した新人打撃成績】
☆長野久義(巨人/2010年)
128試合:459打席<打率.288/19本/52打点/12盗塁>
・伊志嶺翔大(ロッテ/2011年)
126試合:492打席<打率.261/2本/21打点/32盗塁>
・川端崇義(オリックス/2012年)
125試合:484打席<打率.266/2本/27打点/6盗塁>
☆髙山俊(阪神/2016年)
134試合:530打席<打率.275/8本/65打点/5盗塁>
・茂木英五郎(楽天/2016年)
117試合:481打席<打率.278/7本/40打点/11盗塁>
☆源田壮亮(西武/2017年)
143試合:647打席<打率.270/3本/57打点/37盗塁>
☆京田陽太(中日/2017年)
141試合:602打席<打率.264/4本/36打点/23盗塁>
※☆は新人王
清原がプロ1年目に残した伝説的成績
近年、新人野手の豊作が続き、2016年、2017年と連続してふたりの新人が規定打席に到達しているが、それでもごく限られた選手だけが達成できる“快挙”といっていいだろう。
そして、彼ら7人のなかに高卒新人は誰ひとりとしていない。1年目に規定打席に到達した最後の高卒新人は1988年の立浪和義(元中日)にまでさかのぼる。その年の立浪の成績は110試合に出場し、規定ぎりぎりの403打席、打率.223、4本、18打点、22盗塁というものであった。
決して抜きん出た打撃成績とはいえないにもかかわらず、立浪が起用され続けたのは、遊撃手という難しいポジションでルーキーイヤーにいきなりゴールデングラブ賞に輝く卓越した守備力があったからである。
であるなら、守備が不安視される清宮の場合は逆に打って打って打ちまくるしかない。1年目にそれこそ打って打って打ちまくり、野球ファンに伝説として語られる成績を残した高卒新人が清原和博(元西武ほか)である。清原がプロ1年目、1986年に残した成績は126試合、471打席、打率.304、31本、78打点、6盗塁という驚異的なもの。
さすがにこの清原の数字を更新するような活躍を清宮に期待するのは現実的ではないかもしれない。ただ、どこまで迫るのか――そんな期待を持って超大型高卒新人の記念すべきプロ1年目を追っていきたい。
文=清家茂樹(せいけ・しげき)