雪辱に燃える2018年
11年ぶりのBクラス転落…。2年目の由伸巨人は厳しい戦いを強いられた。
オフには総額30億円と言われる大補強に乗り出し、史上初となるFA戦士3枚獲りに成功。2013年に楽天の創設初優勝と日本一に大きく貢献したケーシー・マギーも獲得するなど、V奪還に向けた準備を進めた。
ところが、フタを開けてみればまさかの大苦戦。5月から6月にかけて球団史上ワーストとなる13連敗を喫するなど、特に前半戦は厳しい戦いの連続だった。後半になってエースの菅野智之やマイルズ・マイコラス、田口麗斗の3本柱を軸に巻き返しを図ったものの、惜しくも3位には届かず。制度施行後はじめてクライマックスシリーズ進出を逃すこととなった。
雪辱に燃える2018年シーズン。しかし、このオフはローテーションを支えたマイコラスが退団。村田修一には事実上の戦力外を告げるなど、主力として活躍していた選手がチームを離れた。
補強が急務な先発陣は、西武からFA宣言した野上亮磨を獲得。マイコラスの穴を埋める存在としてはやや物足りなさがあるかもしれないが、規定投球回に到達して11勝(10敗)を挙げている右腕にかかる期待は大きい。
また、野手では昨季セ・リーグ本塁打王に輝いた中日のアレックス・ゲレーロを獲得。チーム最多本塁打がマギーの18本だったチームにおいて、来日1年目にして35本塁打を放った男には打線の救世主として期待がかかる。
“勝って育てる”難しさ
特にゲレーロの加入は大きなインパクトを残した。前年のリーグ本塁打王が同リーグのライバルチームに移籍。しかし、巨人ファンが手放しで喜んでいるかというと、そうとは言い切れない部分もある。
この“2018年”という点だけで見れば、ゲレーロの補強が吉と出る可能性は高い。これは大方の見方であるが、中長期的な目線で見てみるとどうか。ゲレーロという大きな存在により、若手野手のプレー機会は確実に減少する。
昨季のチームを見てみると、年間300打席以上に立った野手は7名いたが、そのうち20代の選手は坂本勇人と小林誠司の2人だけ。その坂本も今年で30歳を迎え、小林も29歳になる。次代のチームを担う若手がまるで出てきていないというのが現状だ。
象徴的な存在となっているのが、期待の21歳・岡本和真だ。昨季は開幕スタメンに名を連ねるなどブレイクに大きな期待がかかったが、わずか15試合の出場に留まった。村田の退団により、今季こそ三塁のレギュラー奪取に期待がかかるものの、ゲレーロという新たなライバルが立ちはだかる。
ちなみに、昨季ファームで2ケタ本塁打を放った選手は、岡本以外だとギャレット・ジョーンズとルイス・クルーズの2人だけ。シーズン前半はトレードで加入した石川慎吾が、シーズン終盤には宇佐見真吾が一軍でアピールを見せたものの、もっと若き力の躍動が見たかったところだろう。
順位を挙げることは最優先課題だが、同時に明るい未来を示すことが求められる3年目の由伸巨人。外国人枠の問題や若手の登用など、指揮官の手腕に注目が集まる。
文=八木遊(やぎ・ゆう)