コラム

松井、由伸、清原、江藤…2000年の長嶋巨人「ミレニアム打線」を振り返る【平成死亡遊戯】

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ミレニアム打線の中核を担った(左から)清原、松井、高橋由、清水

超重量打線


 ゴジラ・イズ・バック。松井秀喜が宮崎に戻ってくる。今キャンプで2年ぶりに、巨人で臨時コーチを務める予定だ。

 日米通算507本塁打を放ち、史上最年少の43歳7カ月で日本野球殿堂入りを決めた背番号55。巨人で最後にプレーしたのは50本塁打をかっ飛ばした2002年シーズンで、もう16年前のことになる。「当時流行っていたのはベッカムのソフトモヒカンと多摩川に現れたアゴヒゲアザラシのタマちゃん」なんていきなり言われたところで、もはや何のことだか分からない。あれから長い時間が経ったのだ。

 先日、4年前に出版された『ジャイアンツ80年史 1993-2003』(ベースボール・マガジン社)のページをめくっていたら、清水隆行が仁志敏久との対談企画で「あのメンバーで試合に出ようと思ったら、2番を打てるようにならないといけなかったんですよね。3から7番までは“超”が付くホームランバッターがそろっていましたから」と当時のことを懐かしそうに回想していた。

 彼らがあのメンバーは理想的だったと振り返る20世紀最後の2000年(平成12年)と言えば、長嶋巨人と王ダイエーが戦った日本シリーズの“ON対決”で盛り上がったシーズンで、両リーグ1位の203本塁打の破壊力を誇る巨人攻撃陣をミスター自ら「ミレニアム打線」と命名したことが話題となった。

 4年ぶりのリーグ優勝を決めた9月24日の中日戦(東京ドーム)では4点ビハインドの9回裏、江藤が同点に追いつく32号満塁弾をかっ飛ばし、続いて二岡がライトスタンドへサヨナラ弾の劇的V。とにかく打って打って打ちまくる。ミレニアム打線の4番には42本、108打点で打撃二冠に加えMVP選出の松井秀喜が座り、3番はオフに広島からFA移籍してきた江藤智、5番ファーストでは清原和博とドミンゴ・マルティネスを併用する贅沢オーダーだ。さらに6番高橋由伸、7番二岡智宏の当時アイドル的な人気を誇っていた2人が恐怖の下位打線を形成。攻撃的1・2番コンビを組んだのは他球団なら充分クリーンナップを打てる仁志敏久と清水隆行。さらにベンチにはクセ者元木大介やバントの神様・川相昌弘らもスタンバイする層の厚さ。

 投手陣は前年20勝を挙げた2年目の上原浩治、ダイエーからFA移籍の工藤公康、阪神から獲得したダリル・メイ、ルーキー左腕の高橋尚成らが先発ローテを形成した。…って、そのほとんどが逆指名ドラフト組とFA移籍組の選手たちというのに時代の流れを感じてしまう。


振り返ると意外な事実?!


 今、改めてそのスタメンを見ると、意外な事実に驚く。年齢層がとにかく若いのである。松井26歳、由伸25歳、二岡24歳、清水27歳、仁志29歳と主力のほとんどは20代。FA組でさえ江藤30歳、清原33歳である。キャッチャー村田真一は37歳だが、この年のドラフト1位で中央大の阿部慎之助を指名して、翌01年からは22歳の正捕手が誕生した。

 ベテランのイメージがあった江藤や清原でさえ、現在のチームで言ったら今年30歳の大台に乗る坂本勇人や33歳の長野久義とほぼ同い年だ。「坂本より年下の若手野手が育たない」と言われる2018年と比較すると夢のような若さ溢れる陣容である。

 ちなみに2000年プロ野球開幕前の3月27、28日には日本での試合開催のため来日していたメッツとカブスの両軍と巨人がオープン戦で対決。ここで巨人は松井・由伸のアベックホームランでカブスに6対0と完勝、続いてメッツにも由伸の2試合連続本塁打の活躍で9対5と連勝を飾った。長嶋野球の完成系とも言えるミレニアム打線は、なんと開幕直前の本気モードで来日していたメジャーリーガーたちをも一蹴してみせる。

 しかし、“4番1000日計画”で育て上げた松井を中心に絶妙なバランスで成立していた当時の巨人は、翌01年に長嶋監督が退任して、02年オフに背番号55がヤンキースへ移籍すると、あっけなく終わりを告げる。長嶋監督とファンが20世紀の終わり頃に見た一瞬の夢。逆指名ドラフトが終わり、有力FA選手はこぞってメジャーリーグを目指す昨今の国内移籍市場の流れを見ても、あれだけの豪華メンバーがひとつのチームに集結することは今後しばらくないだろう。

 数年前、とあるトークイベントに出演した清水は球団記録のシーズン191安打を放った2002年シーズンのことを聞かれると、笑いながら自らの現役時代をこう振り返っていた。

「僕、どれだけヒット打っても、一緒に守ってた外野の2人が国民栄誉賞(松井)と現監督(由伸)ですよ。かないっこないでしょう(笑)」


【2000年巨人 ミレニアム打線】
1番 仁志(二塁/29歳)率.298 20本 58点
2番 清水(左翼/27歳)率.271 11本 46点
3番 江藤(三塁/30歳)率.256 32本 91点
4番 松井(中堅/26歳)率.316 42本 108点
5番 清原(一塁/33歳)率.296 16本 54点
6番 高橋(右翼/25歳)率.289 27本 74点
7番 二岡(遊撃/24歳)率.265 10本 32点
8番 村田(捕手/37歳)率.204 7本 34点
※マルティネス(35歳)率.288 17本 64点

文=中溝康隆(なかみぞ・やすたか)
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