阪神の外野争いに新星現る
待ちに待ったシーズンの開幕まであと1カ月とちょっと。キャンプからオープン戦にかけて、大きな見どころになるのが新人選手たちのサバイバルだ。
今回注目したのは、秋のドラフトで目玉になった選手ではなく、下位指名ながら必死のアピールを続けている選手たち。なかでも今年目立っているのが、“外野手ルーキー”の奮闘である。
投手やほかの野手に比べ、ドラフトでも目玉にはなりにくいポジションと言える外野手。それでも、過去を振り返ってみると赤星憲広(阪神/2000年・4位)が新人王を獲得していたり、ほかにも川端崇義(オリックス/2011年・8位)、清田育宏(ロッテ/2009年・4位)、大島洋平(中日/2009年・5位)といったところが下位指名から這い上がって1年目から結果を残している。
今年の春季キャンプを見渡すと、ここまでは清宮幸太郎(日本ハム)や安田尚憲(ロッテ)ら高卒ドラフト1位のスラッガー候補に注目が集まるなか、まさにドラフト上位ではない外野手が躍動しているのだ。
阪神の島田海吏がその筆頭株。上武大からドラフト4位で入団した男は、中学時代には桐生祥秀(現100メートル日本記録保持者)に勝利したこともあるという“快足”を武器にここまでアピールを続けている。
2月21日に行われた韓国・KIAと練習試合では、本塁打を含むマルチ安打をマーク。足だけでなく打撃でも金本知憲監督にアピールするなど、良い活躍を見せた。
阪神の外野陣を見ると、福留孝介と糸井嘉男は確定。センターのポジションを中谷将大や高山俊、俊介と争うことになりそうだ。下位指名とはいえ、入団時に与えられた背番号は『53』。あの赤星氏が背負っていたものということからも、その期待の高さは伺える。
同じドラフト4位入団から新人王に登りつめた“レッドスター”の再来なるか。厳しいポジション争いに挑む虎のルーキーから目が離せない。
ロッテ・菅野はタイトルホルダー角中に挑む
ロッテでは、悔しさを糧にしてプロの世界に飛び込んできた男が良い活躍を見せている。
こちらもドラフト4位で入団した菅野剛士。社会人・日立製作所から加入した24歳の外野手だ。
東海大相模高から明治大というエリートコースを突き進んできた菅野。大学時代には東京六大学の二塁打記録(28本)を樹立するなどの活躍を見せ、プロ志望届を提出したが、ドラフト会議で名前が読み上げられることはなかった。いわゆる“指名漏れ”である。
その後は社会人・日立製作所で腕を磨き、ついに掴んだプロ入りのチャンス。持ち前の打撃力を売りとし、井口資仁新監督へキャンプ序盤から猛アピール。その成果が出たのか、春季キャンプ後半に入って練習試合にもスタメン出場を続けている。
2月22日に行われた中日との練習試合では、「2番・左翼」でスタメン出場するとマルチヒットをマーク。ロッテの同ポジションには首位打者を2度獲得している角中勝也がいるが、勢いのままにポジション獲得を目指す。
最後に、ドラフト指名時は外野手ではなかったものの、今やセンターのレギュラー候補となっているの巨人の若林晃弘もピックアップしたい。
高橋由伸監督が「若手競争枠」として掲げているセンターのポジション。若林は社会人の名門・JX-ENEOSから即戦力候補の内野手として入団したが、今キャンプではセンターの守備にも就き、激しいレギュラー争いを繰り広げている。
21日に行われたヤクルトとの練習試合では、初打席でランニング本塁打を放つ鮮烈なデビュー。ややラッキーな部分もあったとはいえ、快足飛ばしてダイヤモンドを駆け巡る姿は大きなアピールとなったに違いない。開幕スタメンの大穴候補としておもしろい存在だ。
「入ってしまえば一緒」という言葉もあるように、今回取り上げた各選手はドラフト時こそ目玉としての扱いではなかったものの、入団してからは横一線。果たして、開幕一軍・スタメンを掴み取ることができるか。競争の中で存在感を見せる“外野手ルーキー”のこれからに注目だ。