2017年の“若手OPSランキング”に注目
まだまだ出場機会が限られているため、個人タイトル争いなどとは無縁の若手野手たち。そんな彼らのなかから、昨季“ブレイクの兆し”を見せた選手を探ってみたい。
基準とするのは、出塁率と長打率を合わせた数値である「OPS」。日本でもおなじみの打率や出塁率、本塁打数など、単独の成績による評価より得点との相関性が高く、メジャーではとても重視されているものだ。徐々に日本球界にも浸透しており、既にご存じという野球ファンも多いだろう。
下記は、100打席以上に立って規定打席(443)には未到達、かつ昨季がプロ5年目以内だった選手の12球団OPSランキングだ。ちなみに、平均値はセ・リーグが.696、パ・リーグが.706。各リーグの“OPSキング”はセ・リーグが.936の鈴木誠也(広島)、パ・リーグが1.016の柳田悠岐(ソフトバンク)であった。
【2017年・若手OPSランキング】
※100打席以上規定打席未満かつプロ5年目以内
1位 1.081 山川穂高(西武)
2位 .942 大谷翔平(日本ハム)
3位 .934 森 友哉(西武)
4位 .928 吉田正尚(オリックス)
5位 .896 バティスタ(広島)
6位 .831 オコエ瑠偉(楽天)
7位 .768 中村奨吾(ロッテ)
8位 .733 金子侑司(西武)
9位 .727 横尾俊建(日本ハム)
10位 .725 西川龍馬(広島)
短期間でもOPSが高ければブレイクの可能性大?
ご覧のように、広島のバティスタと西川龍馬以外はパ・リーグの選手が独占した。
今回は1位の山川穂高(西武)から4位の吉田正尚(オリックス)、盗塁王経験者の金子侑司(西武)の5人を“ブレイク後”の選手として除いた4人、つまりバティスタ、オコエ瑠偉(楽天)、中村奨吾(ロッテ)、横尾俊建(日本ハム)を“ブレイク候補”としたい。
彼らに共通するのは、50以上の打席に立ち、かつ月間OPSが.800を超えた月があったということだ。
【“ブレイク候補”が残した月間高OPS】
中村奨吾 .913(7月/74打席)
オコエ瑠偉 .904(8月/69打席)
バティスタ .844(9・10月/52打席)
横尾俊建 .829(9、10月/93打席)
たとえ1カ月という短期間であっても、1に近いようなOPSを残す選手は、いずれ大きな飛躍を果たす可能性が高いと言われる。
例えば、プロ4年目の2016年に29本塁打を放って広島の主軸に成長した鈴木は、2014年の9・10月に1.058という高い月間OPSを残している。さらに、翌2015年5月に鈴木が残した月間OPSは、28打席ながら1.229という驚異的なものであった。
OPSは一般的に7段階に格付けされるが、中村とオコエの数字は「素晴らしい」とされるトップのAランク(.900以上)。バティスタは「非常によい」とされるBランク(.8334〜.8999)。横尾は「良い」とされるCランク(.7667〜.8333)ではあるものの、限りなくBランクに近い数字を残した。
鈴木ほどずば抜けた数字ではないにしても、近い将来のブレイクを期待してもいい数値を残した4人。次代のチームを背負うのは彼らかもしれない。
文=清家茂樹(せいけ・しげき)