首脳陣の意向によりタイプが異なる選手を起用
たとえ同じ顔ぶれであっても、その並びによって得点能力は大きく変わる。それが、打線の面白さだ。できる限り効率良く得点を挙げられる打線を組むために、首脳陣は頭を悩ませる。
とはいえ、クリーンアップの場合は、チーム内の強打者3人をどう組み合わせるかという問題はあるものの、比較的スムーズに決められるだろう。トップバッターも長打力を持ち併せた選手を起用する場合もあるが、まずは出塁能力が問われる点では決めやすい。
だが、中軸の後を任せる「6番打者」となると話は変わる。クリーンアップが残した走者を還すべく、勝負強さが光るベテランや、将来のブレイクに向けて経験を積ませたい若手、自由に打たせたい助っ人外国人など、首脳陣の意向によりまったく違うタイプの選手が起用される。
過去に一時代を築いたチームのクリーンアップ、加えてトップバッターは思い浮かべることができても、「6番打者」となるとなかなか思い出せないことが多い。それは「6番」という打順が、先述のように戦略やチーム状況によって、シーズン中でもタイプが異なる選手を起用する流動的な打順ということの影響ではないだろうか。
また、6番打者の起用法や打撃成績を見ることで、選手層の厚さ、チーム力の安定度を測ることもできそうだ。上位打線に加えて6番まで固定できるとなると、それだけ戦力がきっちりと整っていると言っていい。秋山幸二、清原和博、デストラーデの“AKD砲”の後を6番・石毛宏典に託し、1980年代終盤から1990年代前半にかけて黄金時代を築いた西武はその典型かもしれない。
球団別最多6番スタメン起用選手成績
それでは、現在の12球団の「6番打者」はどんな顔ぶれなのか。昨季、各チームで6番にスタメン起用された選手の人数、そして、チーム内で最も多く6番のスタメンに名を連ねた選手が6番打者として残した打撃成績を振り返ってみる。
【2017年球団別6番スタメン起用人数】
※数字は最多6番打者の6番時の成績
・広島:10人
▼エルドレッド(72試合)
打率.298 得点圏.353 23本 63打点 0盗塁
・阪神:10人
▼鳥谷 敬(117試合)
打率.293 得点圏.276 4本 39打点 6盗塁
・DeNA:12人
▼戸柱恭孝(65試合)
打率.212 得点圏.327 8本 36打点 0盗塁
・巨人:10人
▼長野久義(50試合)
打率.237 得点圏.054 4本 9打点 2盗塁
・中日:19人
▼藤井淳志(56試合)
打率.274 得点圏.300 4本 24打点 3盗塁
・ヤクルト:16人
▼中村悠平(25試合)
打率.244 得点圏.267 0本 9打点 0盗塁
・ソフトバンク:9人
▼中村 晃(71試合)
打率.293 得点圏.313 1本 17打点 2盗塁
・西武:12人
▼メヒア(46試合)
打率.215 得点圏.161 14本 29打点 0盗塁
・楽天:13人
▼島内宏明(42試合)
打率.296 得点圏.273 4本 13打点 1盗塁
・オリックス:12人
▼中島宏之(48試合)
打率.317 得点圏.289 8本 21打点 0盗塁
・日本ハム:16人
▼田中賢介(41試合)
打率.255 得点圏.200 2本 10打点 4盗塁
・ロッテ:14人
▼中村奨吾(47試合)
打率.297 得点圏.178 7本 20打点 8盗塁
6番にスタメン起用した人数が最も少なかったのは9人のソフトバンク。最多はソフトバンクの2倍以上である19人の中日だった。また、6番としてチーム内最多スタメン出場を果たした選手の出場試合数が12球団で最も多かったのは阪神。鳥谷敬が117試合で6番にスタメン起用されている。
上位球団ほど6番にスタメン起用した人数が少なく、また、6番打者をある程度固定できているようだ。特にセ・リーグではその傾向が強い。下位に低迷するチームの場合、打線にテコ入れしなければならないため、このような傾向が出るのも当然と言えば当然だ。
ただ、その打撃成績にも力の差が表れているようだ。“6番打点王”はセ・リーグを制した広島のエルドレッド。得点圏打数では出場試合数も多い鳥谷の98と30打数差の68だったが、.353という高い得点圏打率、また23本塁打を放った破壊力で断トツの63打点を叩き出した。クリーンアップの後に怖いエルドレッドが控えている。広島の強さも納得だ。
クリーンアップと比べると、脚光を浴びることは少ない6番打者。しかし、その顔ぶれや成績からは、チームの戦略や置かれている状況、戦力の厚みが透けて見える。今季は、「6番打者」に注目してみても面白いかもしれない。
文=清家茂樹(せいけ・しげき)