コラム

高木勇人が西武の救世主になれる3つの条件

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西武入団会見時の高木勇人(C)KYODO NEWS IMAGES

白球つれづれ2018~第3回・思わぬ「掘り出し物」?


 これも辻西武の強運か…?

 FAで野上亮磨が巨人移籍。中継ぎのエース格だった牧田和久はメジャーへ渡り、勝利の方程式の一角を担っていたシュリッターまで退団と、投手陣の大幅な戦力ダウンに直面していたレオ軍団に光明が射して来た。

 野上の“代用品”として獲得した高木勇人が先発ローテーションの一角に大浮上。この男、野上のFA移籍の際に巨人のプロテクト枠から外れた、言わば一軍戦力として失格に近い烙印を押されての西武入団。互いの台所事情があったにせよ、意外な「掘り出し物」になる可能性は十分だ。

 17日、メットライフドームで古巣・巨人戦に先発した。試合前に巨人ベンチ前へあいさつに足を運ぶと、投手コーチの斎藤雅樹からは「こっちに来るんじゃない」と先制パンチ。外野守備・走塁担当の大西崇之からは「(試合で)ボコボコにしてやるからな」ときつい一言。いずれも笑顔交じりのジョークで、愛されキャラの高木は苦笑いするしかなかった。

 ところが、マウンドで昨日の友と相対すると凡打の山を築いていく。2回に岡本和真の中越え二塁打を足場に得点を許したが、失点はこの1点のみ。7回を投げて被安打4、奪三振4、1四球の好投。マギーとゲレーロの両外国人が不在とは言え、巨人の左のエース・田口麗斗と互角に渡り合う出来には首脳陣も合格点を与えている。


新天地で復活なるか


 「ランナーを出してからよく粘ったね」とは監督・辻発彦の試合後の談話だが、ここに高木復活の第一の条件がある。

 立ち上がりは制球に苦しみアップアップのスタートだったが、これを救ったのが味方の堅守だ。初回一死後、吉川尚輝の三塁線後方にふらふらと飛んだ打球は、遊撃の源田壮亮が快足を飛ばしてスライディングキャッチ。もし、落としていれば二塁打でクリーンアップを迎える危機だった。

 2回には左翼手・金子侑司が左中間の浅い飛球を好捕、3回にも一死一塁からヒットエンドランを仕掛けてきた巨人に対して中堅手・秋山翔吾がこれまた素早いスタート。飛び出した走者も戻れず、併殺に仕留める。西武の外野陣は、右翼手の外崎修汰も含めて俊足強肩の鉄壁布陣。巨人時代に同じ状況なら傷口は広がっていたかもしれない場面。投手にとってこれほど心強いバックもいない。


 第二の条件は強力打線にある。この試合は田口の精密なコントロールと緩急の前に沈黙したものの、オーダーの破壊力は球界屈指だろう。

 特に今季は森友哉に捕手定着の期待が高く、この日はかつての本塁打王である中村剛也が6番、メヒアは7番に配置されていた。どこからでも一発の飛び出す打線はライバル球団を震え上がらせるはずだ。ちなみに、巨人の昨季の総得点は536点でチーム本塁打は113本に対し、西武は690得点で153本。つまり、最初から1点も与えられない先発投手が5回を2~3失点でもオーケーとなれば心理的にもプラスになるはずだ。


 そして、最後の条件は高木の投球術そのものにある。

 この日のピッチング内容をチェックしてみると、最速は143キロのストレート、最遅は90キロ台のスローカーブで、中心は130キロあたりの変化球。特に阿部慎之助を空振り三振に斬ったカットボールこそが最大の武器で、これまで対戦の少ないパリーグ打者はその軌道に面食らうだろう。もともとパ・リーグはセ・リーグに対してパワー重視の力勝負を前面に押し出して来た。そこに高木のような変化球は生きてくる。

 新人だった3年前はいきなり9勝を挙げ、先発ローテ定着が期待された。しかし、2年目以降は故障もあって低迷が続き、昨年は1勝止まり。こうなると巨人のファームには杉内俊哉、内海哲也、大竹寛ら大物投手が控えているから、なかなか一軍からのお呼びもかからない。こんな八方塞がりの局面で皮肉にも先発陣として最も期待度が低く、FAの補償対象となったというわけだ。

 だが、西武に目を転じれば投手陣はまだまだ手薄だ。菊池雄星、十亀剣、ウルフまでは先発当確ながら第4、第5の枠は横一線。だからこそ、高木にかかる期待は大きい。

 瓢箪から駒のような移籍劇。この「掘り出し物」が輝きを取り戻すようなら、ひょっとしてパ・リーグ覇権争いのキーマンになるかも知れない。


文=荒川和夫(あらかわ・かずお)
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