“伏兵”の活躍で首位に立つヤクルト
昨季、それぞれリーグ最下位に沈んだヤクルトとロッテが好調だ。
ここまでのヤクルトは6勝3敗で勝率.667。リーグ連覇中の広島と同率首位に並んでいる。一方のロッテも5勝4敗と勝ち越し、2位タイ。まだ3カードを終えたばかりではあるが、昨季の低迷ぶりを思えば、上々の滑り出しである。
両者に共通するのは、監督・首脳陣を一新したこと。その上で、積極的に攻めるという姿勢がはっきりと見て取れる。
現時点の数字で判断するのは時期尚早かもしれないが、走塁という面での積極性が表れる盗塁数を見てみると、ヤクルトの9盗塁はDeNAの10盗塁に次ぐリーグ2位。ロッテの11盗塁は堂々の12球団トップだ。昨季のチーム盗塁数は、ヤクルトがリーグ5位、ロッテがリーグ3位であった。ともに走塁改革を掲げる両チームの姿勢が数字となって表れていると言えるだろう。
ヤクルトの場合、7盗塁の山田哲人がひとりで引っ張っている印象もあるが、青木宣親の復帰に伴って、高い出塁率と盗塁技術を誇る山田を先頭打者に据えられたことが、得点力アップにつながっていることは間違いない。
また、開幕前には「ケガ人なくベストメンバーがそろえば…」という条件付きでヤクルトの逆襲を予想する論調が目立ったが、雄平を欠き、川端慎吾や畠山和洋が離脱するなかで、西浦直亨や奥村展征、荒木貴裕、鵜久森淳志、田代将太郎ら“伏兵”とも呼べる選手たちの活躍で好結果を叩き出している。西浦ら5人はいずれも規定打席には到達していないが、全員が打率4割超えという好調ぶりだ。
山川に続いてアジャ井上もついに覚醒か
一方のロッテは、井口資仁新監督がシーズン140盗塁というシーズン目標を掲げている。
これには戦略としての意義のほか、選手の奮起を促す狙いも含まれているだろう。それでも、効果は早速現れており、球界を代表する韋駄天・荻野貴司が4盗塁でチームトップ。昨季後半からブレイクの兆しを見せている中村奨吾が3盗塁と続く。
そして、ロッテもヤクルト同様にベストメンバーは組めていない。2度の首位打者タイトルを誇る打線の核・角中勝也がケガで開幕から不在、期待された新外国人・ドミンゲスも不振でファーム暮らしをしているなか、奮闘しているのは藤岡裕大と菅野剛士のルーキーコンビ、そしてプロ5年目の井上晴哉だ。
ルーキーイヤーにいきなりオープン戦首位打者となり、大砲候補として期待されてきた井上。昨季、同じようなタイプの西武・山川穂高が23本塁打をマークしてチームの4番に定着したこともあり、「ずいぶん差をつけられた」という声もあった。
しかし、ここまでの井上は、打率と本塁打では山川に及ばないものの、9打点は山川と並ぶリーグ3位タイ。現時点までは十分に4番の役割を果たしている。
ともに大きく負け越してしまった昨季のヤクルトとロッテ。単純に考えると、両チームが上位に食い込んでくれば、それだけペナントレースは混戦となる。今季のプロ野球を面白くする“台風の目”はヤクルトとロッテだ。
文=清家茂樹(せいけ・しげき)