白球つれづれ2018~第11回・躓いた楽天
最近、楽天関連のビッグニュースと言えば、野球ではなくサッカーの話。スペインの世界的ビッグクラブであるFCバルセロナの司令塔・イニエスタ選手が今季限りで退団。来季以降の所属先に日本の神戸が名乗りを上げたと現地でも大々的に報じられた。
今季からバルセロナの大手スポンサーになった楽天は神戸の実質上の親会社であり、会長は三木谷浩史。もし、これが現実となれば年俸は日本円にして32億円から38億円と予想されている。神戸には元ドイツ代表のポドルスキが在籍しているが、彼の年俸は6億円。いかにイニエスタの存在がけた違いかわかる。」
その三木谷が人目も憚らず号泣したのは今春3月のことだ。がん闘病の末に亡くなった球団副会長・星野仙一の「お別れの会」の席だった。球団創設のいきさつから、東北大震災とそれを乗り越える初優勝。三木谷の全幅の信頼を得た星野は実質上のGMとしてチームの運営を切り盛りしてきた。オーナーの涙は星野への感謝と同時に、今後の巻き返しを誓ってのもの。監督の梨田昌孝以下、全選手も5年ぶりの日本一を狙い開幕に突入したはずだった。
ここへ来て遅まきながら?の4連勝。ようやく本来の力を取り戻しつつある。とは言え、14日現在(以下同じ)、11勝23敗1分けは断トツの最下位。今月6日には31試合目で早くも自力優勝の可能性が消滅という屈辱を味わう。
開幕2戦目から5連敗、4月にも7連敗など暗いトンネルから抜け出せず早々に二軍打撃コーチの栗原健太と同育成コーチの真喜志康永を一軍に引き上げるなど、首脳陣の一部手直しに迫られる。ちなみに、昨年の滑り出しは絶好調で、この時期は首位を快走していたのだから天国から地獄。梨田・楽天にどんな誤算が生じたのか?
投打に重なった誤算
記録面から見れば投打ともに最悪の状態で滑り出したことがわかる。まず、攻撃陣では「外国人依存症」の弊害が顕著だ。
昨季は猛威を振るったC・ペゲーロの現状は打率.209で、Z・ウィーラーもここへきて打率こそ2割7分台に挙げてきたが3本塁打11打点は物足りない。もう一人の助っ人、J・アマダーに至っては打率.208の不振に左ひざを痛めて選手登録を抹消されてしまった。昨季のチーム本塁打135本のうち、この3外国人で80本。実に6割近くに上る。
一方でチームの盗塁数は今季もリーグワーストの15。リーグトップの西武とロッテの42盗塁に対して三分の一程度。昨季は一番・茂木栄五郎とペゲーロのコンビがチームを牽引したが、外国人が打てないとさっぱり。今春のオープン戦では若き大砲候補の内田靖人が首位打者に輝き一軍切符を手にしたが…。積極走塁にも挑戦して改善の兆しが見えたもののチーム状態が悪ければ、そうそう機動力も仕掛けられない。元の木阿弥というやつだ。
投手陣に目を転じると絶対的ストッパーである松井裕樹の不振が大誤算。昨年から左腕の故障に悩まされていたが、今季はスタートから抑えに失敗の連続。勝ちゲームを落としたり、同点場面でも踏ん張れず、ついには守護神の座をF・ハーマンに明け渡してしまった。「一時的な措置」と梨田は説明するが、もとより松井の復調がなければチームの浮上もない。エースの則本昴大も出遅れ、先発ローテの一角に加わった2年目の藤平尚真も苦しんでいる。シーズン前には、ソフトバンクを破る優勝候補の一角にも目されていただけに、戦力の再整備が急務となる。
「連勝をしなければ借金の返済もない。まずは5割復帰を目指していく」と梨田は言う。その梨田を監督に招請したのも星野なら、フロントとの調整役をこなしていたのも星野だ。外国人選手にとってもにらみを利かせたお目付け役。まさか「星野ロス」の後遺症がこの迷走の因ではないだろうが、まだまだこの先の道のりは険しい。
「何をやってるんだ、ばか者!気合いを入れていかんかい!」鬼の形相で叱咤する星野の姿が目に浮かぶ。
文=荒川和夫(あらかわ・かずお)