新人王への道
“打者・大谷翔平”がここに来て不振に陥っている。
田中将大との注目対決もあったヤンキースとの3連戦は9打数無安打・5三振。ヤンキースタジアムで快音は聞かれず、打率もついに3割を切った。
一方、“投手・大谷”は5月に入ってから徐々に調子上向きだ。
最近3試合は2勝負けなし、防御率は2.25という好成績。予想されていた田中との投げ合いは回避となるも、次回は現地時間30日(日本時間31日)のタイガース戦で今季8試合目の先発登板が予定されている。
開幕から投打でスポットライトを浴びている大谷。“二刀流”を貫くため、現状の起用法では規定打席や規定投球回に達しない可能性が高く、首位打者や最優秀防御率といったタイトルの獲得は難しい。それでも、本当にメジャーの舞台で2つを並行してこなしているうちに、大谷に対しての見方も大きく変わってきた。インパクトという点では大きなアドバンテージがあるだけに、新人王という大きな目標も現実味を帯びてきている。
そこで、今回は大谷と同じア・リーグで新人王の資格を持っている選手に注目。大谷の“ライバル”となりそうなルーキーたちをピックアップしてみた。
今年は本命不在
野手では、ヤンキース勢の活躍が目立つ。
三塁手のミゲル・アンドゥハー(23歳)は、ア・リーグの有資格者で唯一規定打席に到達。打率.292、5本塁打、18打点は大谷の打撃成績とほぼ同じだ。二塁打の数がチームトップの15本と多く、メジャーの水に慣れてくれば、さらに本塁打数も増加していくだろう。
また、打撃面でアンドゥハー以上のインパクトを残しているのが、チームメートで二塁手のグレイバー・トーリス(21歳)だ。メジャーデビューは4月下旬と遅かったため規定打席には到達していないが、ここまで打率.317、9本塁打、24打点をマーク。長打率(.606)はアーロン・ジャッジをも上回っている。加えて足も速く、盗塁数が増えてくれば、新人王を争ううえで大谷の最大のライバルとなりそうだ。
投手では、規定投球回に達しているア・リーグの選手は一人もいない。新人投手で最も多い勝利数を誇るのがレッドソックスのエクトル・ベラスケス(5勝0敗)。2016年までメキシカン・リーグでプレーしていたという遅咲きの29歳だ。
ただし、今季は13試合に登板しているが、そのうち先発は2試合(2勝0敗)だけ。3勝は救援時に挙げたものである。防御率は2.15と安定しているだけに、今後ローテーションに定着して13~15勝挙げられれば、新人王の有力候補になってもおかしくない。
ツインズのフェルナンド・ロメロは、大谷と同じ1994年生まれの23歳。5月にメジャーデビューを果たすと、ここまで5試合に投げて2勝1敗、防御率1.88を記録している。なお、現地時間13日のエンゼルス戦では大谷と投げ合い、5イニングを1失点に抑えた(メジャー3試合・16イニング目で初失点)。今後のさらなる活躍に期待がかかる。
今回は野手と投手、合わせて4人の名前を挙げたが、今季は昨年のジャッジのような絶対的な存在はいない。ア・リーグの新人王争いは大谷が中心となることは間違いないだろう。
果たして、大谷はメジャー1年目の爪痕を“新人王”という形で残すことはできるだろうか…。
文=八木遊(やぎ・ゆう)