S級の難易度!?
現ヤンキースの田中将大が楽天時代に24勝(0敗)を挙げ、タイトルを総なめにした伝説のシーズンから早5年。日本のプロ野球では、その後、シーズン20勝はおろか、18勝以上挙げた投手すらいない。
中5~6日の先発ローテーション制、そして先発・救援の分業制が確立された過去25年を見ても、シーズン20勝以上挙げた投手は僅かに5人だけ。近年の最多勝争いは、15~16勝で決着することが多く、シーズン20勝は至難の業となっている。
現在の先発投手は、シーズンを通してローテーションを守ったとしても、登板数は25~27試合程度。20勝を挙げるには、失敗(敗戦、もしくは勝敗つかず)は年間5試合程度しか許されない。神がかり的な活躍を見せた2013年の田中将大ですら、27試合の先発登板で3度の失敗があった。
援護が期待できる大瀬良
今季のプロ野球は、各チーム50試合前後を消化。チームの消化試合数からシーズン20勝以上のペースで白星を重ねているのは、広島の大瀬良大地(現在8勝、シーズン22勝ペース)、阪神のメッセンジャー(現在7勝、シーズン20勝ペース)の2人だけだ。
もし大瀬良が、残りシーズンをローテーションから一度も外れなければ、残り16~17試合程度に先発できる計算だ。そのうち4~5試合の失敗が許されるが、自己最多が10勝(14年、17年)の大瀬良にとって、これから12勝の上積みは簡単なことではないだろう。
ただし、広島打線はセ・リーグ最多の248得点(1試合平均4.9)を記録しており、攻撃陣の援護射撃が期待できる点は大きい。7月中旬のオールスター休みまでに10勝にのせておけば、大台到達の可能性は十分に出てきそうだ。
最も20勝に近いのは!?
もう一人の“20勝候補”メッセンジャーは、2010年の来日以降、シーズン2ケタ勝利を6度達成。14年に挙げた13勝が自己最多だ。実績、経験という点では大瀬良以上と言っていい。ただし、問題は味方打線の援護。阪神の今季得点数はセ・リーグ最少の165(1試合平均3.3)と泣き所になっている。阪神打線が劇的に改善しない限り、20勝に近づくことは難しそうだ。
パ・リーグではソフトバンクの石川柊太と西武の多和田真三郎が7勝をマークしている。ともに自軍打線の援護は期待できるが、シーズンを通じてローテーションを守った経験がない。これから梅雨、そして暑い季節を迎え、まずは安定した投球を見せることが何より重要だ。
現在7勝以上を挙げている4投手の名前を出したが、20勝に最も近いのは大瀬良で間違いない。かつて中継ぎへの配置転換も経験し、決して順風満帆とはいえない時期を過ごしてきた。その経験もいかし、プロ5年目でさらなる進化を見せつけられるのか。今後の活躍に期待したい。
文=八木遊(やぎ・ゆう)