2011年ソフトバンクに迫るシーズン176盗塁ペース
今季、見事に開幕ダッシュを決めた西武。5月は10勝14敗と負け越し、一時の勢いが衰えたかに見えたが、交流戦に入って盛り返し、快調にリーグ首位をひた走る。その原動力は他の追随を許さない強力打線であることは明白だ。ただ、その高い得点力は打撃だけによるものではない。西武は“足攻”でも他球団を圧倒する。
昨季から指揮を執る辻発彦監督が徹底したのが、守備、そして走塁意識の向上だ。幸いにも、2016年の盗塁王・金子侑司の存在に加え、外崎修汰の台頭、源田壮亮の加入という好条件がそろったこともあり、就任1年目から盗塁数は激増。昨季の129盗塁は広島の112盗塁を上回る12球団トップであった。
そして、今季はその足攻にさらに磨きがかかっている。ここまでの「69」というチーム盗塁数は、同じく走塁革命を掲げる井口資仁監督率いるロッテの57盗塁をしのぐ12球団トップの数字。シーズン143試合に換算すれば、昨季を大きく上回る176盗塁となる。これは、過去20年に限れば、2011年にソフトバンクが記録した180盗塁に次ぐ数字だ。
ほんの数年前の西武は、強打者がそろっている代わりに、三振が多く盗塁は少ないなど粗さが目立ち、得点効率という点はいまひとつな印象だった。だが、いまではまったく別の攻撃スタイルを披露している。
源田、金子、外崎による“トリプルスリー”なるか
そして、西武の足攻を象徴する源田、金子、外崎の3人には、ある快挙達成の期待も高まっている。それは、同一球団3選手による30盗塁だ。別のかたちの“トリプルスリー”ともいえるかもしれない。直近の達成は、井口資仁、村松有人、川崎宗則がそれぞれ42盗塁、32盗塁、30盗塁を記録した2003年のダイエーにまでさかのぼらなければならない。長いプロ野球の歴史でも数えるほどしか記録されていないレアなものである。
そもそも12球団全体で見ても、30盗塁を記録する選手自体が各シーズン、ほんの数人しかいない。俊足と高い盗塁技術を誇る選手であっても、レギュラーを張れなければ到達できない数字だ。同じチームの3人が同時に達成するとなると、その難しさは容易に想像できる。しかも、投手のクイック技術の向上などさまざまな要因により盗塁自体が減少傾向にある現代のプロ野球では、さらに難易度が高まっているといえるだろう。
ここまでの源田、金子、外崎の盗塁数はそれぞれ「19」、「18」、「13」。単純にシーズン143試合に換算すれば、それぞれ48、45、33となる。10年ぶりのリーグVはもちろん、「青の三連星(ブルースリー)」と名付けられた“高速トリオ”による快挙達成がなされるかにも注目したい。
※数字は6月10日終了時点