コラム 2018.06.18. 20:10

日本戦当日は野球も休み?日韓W杯に変則日程で臨んだ2002年プロ野球界を振り返る【平成死亡遊戯】 

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日本対トルコが行われた6月18日に唯一開催されたプロ野球、中日対ヤクルトで中前にタイムリー打を放つ古田=ナゴヤドーム

ロシアW杯が開幕!


 4年に一度のサッカーの祭典、2018FIFAワールドカップロシア大会が始まった。

 フジテレビ系列の試合中継では解説に鈴木隆行、スタジオゲストは川口能活や稲本潤一といった面々が顔を揃え、彼ら2002年日韓W杯の代表組もすっかりアラフォー世代である。

 今思えば、当時は日本中が異様な雰囲気だった。グループリーグ日本vsロシア戦のテレビ視聴率はなんと66.1%を記録。さらに決勝戦のドイツvsブラジルも65.6%とまさにサッカーバブル絶頂のお祭り騒ぎ。

 日本代表チームに完全密着したドキュメンタリー作品『6月の勝利の歌を忘れない』で話題になったのは、ロシア戦勝利後にロッカールームを訪れた当時の小泉純一郎首相に半裸で抱きつく勝利の立役者・稲本潤一の姿。「おまえ、すごいよ稲本」と驚愕する森岡隆三に対して、「ないで、総理と抱き合うことないで」なんつって笑う22歳の稲本は、まさに人生の絶頂で誰よりもキラキラしていた。

 そして、ふと思う。あの2002年、平成14年のプロ野球は自国開催のサッカーW杯中にどんなシーズンを送っていたのか? 無性に気になり、図書館で当時のスポーツ新聞(日刊スポーツを閲覧)や雑誌を確認してみることにした。


2002年の幕開け


 まず2002年2月1日のキャンプイン当日の目玉は「阪神星野仙一&巨人原辰徳」の2人の新監督。「ダイエーホークスのゴールデンルーキー寺原隼人を警官8人でガード」や「日本初の開閉式天然芝の横浜ドーム構想」という野球ネタに交じり、すでに“ワールドカップまであと119日”と紙面カウントダウンも始まっており、32人の各国代表監督を紹介するサッカー専門誌のようなコアな連載もある。

 ちなみに生きる上でまったく役に立たない情報を書くと、同日発売の雑誌FRIDAYには『酒井若菜vs乙葉 禁断のバスト対決』なんて時代を感じさせるクラビアが掲載されていた。

 とにかく16年前の新聞や週刊誌を見て驚いたのは、サッカー選手の登場率の高さだ。中田英寿(パルマ)や小野伸二(フェイエノールト)が頻繁に大きく取り上げられ、もちろんトルシエ監督ネタも多い。『週刊少年マガジン』では巻頭カラー66Pで漫画「小野伸二物語」まで掲載されている。

 さらに2月8日にはソルトレークシティ冬季五輪が開幕。紙面に踊る「世界の本田」もプロフェッショナルのケイスケ・ホンダじゃなく、男子フィギュアスケートで4位入賞の本田武史である。

 ハワイの地からグラサン姿でポーズを決めるのは当時30歳でサンフランシスコ・ジャイアンツへ移籍したばかりの新庄剛志。「(現役は)あと3年ぐらい。早いって? 野球の他にもやりたいことあるもんね」と仰天発言に周囲は笑ったが、本当に数年後に引退してしまうのはご存知の通りだ。

 マスコミも世界で戦うアスリートを均等に取り上げ始めた21世紀初頭、プロ野球の報じ方も徐々に変化が見える。巨人の清原和博の新打法には「清原ボンズや」、松井秀喜がオープン戦第1号を放てば「ジオンビー流だ!できた3冠打法」の見出しが踊る。前年、イチローがシアトル・マリナーズ1年目でMVPや首位打者獲得の活躍を見せて、メジャーリーグが一気に日本の野球ファンにとって身近になった時期だ。


迫りくる日韓W杯


 世の中では春から6月の日本戦チケットを巡る争奪戦が始まっており、余った海外放送記者席数百枚が国内向け3次販売へ回されることに。そんな喧噪の中、プロ野球を盛り上げたのは星野阪神だった。

 オープン戦で15勝3敗2分という驚異的なペースで勝ち星を重ね、ペナントレースでも開幕7連勝の快進撃スタート。3・4月は17勝8敗1分で単独首位。5月も12勝10敗で貯金を稼ぐと、関東でもデイリースポーツ売上げは前年比3割の伸びを記録する。

 なにせ昨年まで最下位が定位置のチームが突如優勝争いだ。4月19日に行われたシーズン初の本拠地・甲子園での阪神vs巨人戦は徹夜組300人の列、臨時電車も増発、猛虎党「オロナミンC」3本イッキ飲みとナニワの街が燃えた。

 5月に入り、ついに日韓ワールドカップ開幕まで1カ月を切る中、パ・リーグでは西武とダイエーが好調で、日本ハムのガッツ小笠原が3割8分を超える打率で首位打者争いを独走。セ・リーグではGT直接対決を制した原巨人が開幕から35試合目で首位に立った。この試合、ゴジラ松井が猛打賞の活躍で打率.368でリーグトップに躍り出る。

 5月末になると、もう紙面もサッカーサッカーまたサッカーだ。「ベッカム初戦スタメンへ」「宮本鼻骨骨折」「小野強行出場」「中津江村にカメルーン代表来た!」となんか懐かしいこの感じ。どさくさに紛れて6月1日に超ド級サッカーエンターテインメント映画『少林サッカー』も公開されたことに触れておきたい。


W杯仕様の変則スケジュール


 そして、プロ野球界も日韓W杯変則スケジュールへと突入。6月3日(月)から5日(水)の3日間は12球団試合なし。6月4日、9日、14日の日本戦当日のプロ野球も完全休養日だった。

チームによっては、日本戦前後は再度3日間空くこともあり、このまばらな日程に各監督は四苦八苦。W杯期間用ローテを組み臨むも、星野阪神のように8連敗を喫し6月は4勝13敗と一気に失速する球団もあった。一方で西武は9連勝、近鉄も10連勝と変則日程を味方につけて優勝争いを繰り広げた。

 さて、日本列島が注目したW杯の日本戦だが、試合翌日の紙面では長嶋茂雄や王貞治はもちろん、星野や原といった球界関係者の感想コメントも掲載され、西武の若きエース松坂大輔は日本vsロシア戦をスタジアム観戦。ヤクルトの藤井秀悟は日本vsベルギー戦を現地観戦して風邪を引き発熱。直後の先発予定を回避し、ロシア戦のチケットも持っていたがコーチから止められたというズンドコエピソードも残っている。

 そんな球界をも巻き込んだ2002年の日韓W杯狂騒曲。決勝トーナメント1回戦の日本vsトルコ戦が行われた6月18日(火)のプロ野球は、中日vsヤクルトの1試合だけが行われている。練習中の15時半にキックオフとなり、ヤクルト若松監督も最初の30分はベンチ裏でテレビ観戦。選手たちも練習の合間に結果が気になりテレビの前に走った。

 結局、雨の宮城でトルコに惜敗してトルシエジャパンの戦いは終わりを告げるが、夕方のニュースも夜のテレビもその話題一色に。そんな異様な雰囲気の中で行われた試合はヤクルトが4対3で勝利し3位に浮上。お立ち台に上がったプロ野球選手会長の古田敦也は、喧噪の日々を締めくくるようにこう言った。

「今日、球場に来てくれたお客さんに本当に感謝しています」と。


文=中溝康隆(なかみぞ・やすたか)

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