衝撃を与えたニュース
6月も後半に差し掛かり、2018年の折り返し地点もすぐそこ。序盤から様々な話題が飛び交ったメジャーリーグだが、中でも大きなトピックスと言えば「イチローの球団特別アドバイザー就任」だろう。
マリナーズ電撃復帰が決まったのが今年の3月のこと。故障者が続出したチーム事情もあって、5年ぶりとなる開幕スタメンも掴んだが、離脱した選手たちが徐々に戻ってくると徐々に厳しい話題も増えていく。
マイナー落ちか、あるいは自由契約まで…?そんな憶測が飛び交い始めた矢先、マリナーズは“異例の決断”を下す。それが「スペシャルアシスタントアドバイザー(会長付特別補佐)」という契約だ。チームには所属し、これまで通り練習も継続するものの、選手としては今季の残り試合には出場することができなくなった。
イチロー自身にとっても、そしてチームにとっても大きな節目となる決断であったが、以降のマリナーズは絶好調。現地6月18日時点で46勝26敗と貯金を20もつくり、首位を快走するアストロズに食らいつく。実はアメリカ4大プロスポーツで最長の「16年連続プレーオフ進出ならず」という不名誉な記録を続けているチームだが、今年こそ終止符を打つことができるのではないかと期待が高まっている。
ポストシーズンと縁がない男
思えばイチローは2001年のメジャーデビュー以来、一度もワールドシリーズ(以下、WS)の大舞台を経験していないことでも知られている。
ポストシーズン(以下、PS)を戦ったのも、ルーキーイヤーだった2001年とヤンキース時代の2012年の2回だけ。ことごとく秋の決戦と縁がなかったが、果たしてイチロー以外にもこういった選手はいるのだろうか。今回は「WS未経験の野手」をメジャー通算出場の多かった順に上位を並べてみた。
【歴代・WS未経験野手の出場試合ランキング】
1位 2831試合 ラファエル・パルメイロ(1986~2005年)
2位 2671試合 ケン・グリフィー・ジュニア(1989~2010年)
3位 2651試合 イチロー(2001~2018年)
4位 2627試合 アンドレ・ドーソン(1976~1996年)
5位 2528試合 アーニー・バンクス(1953~1971年)
調査してみると、イチローは“歴代3位”に該当。僅差の2位にはイチローの親友であるケン・グリフィー・ジュニアが名を連ねている。
5位のバンクスらの時代とは違い、近年はチーム数の増加もあってWS出場はより狭き門になった。イチローも2001年と2012年、過去に出場した2度のプレーオフはいずれもリーグ優勝決定シリーズで敗れ、目前のところで“決勝戦”進出を逃している。
WSの難易度は高まっているのに対し、PSそのものへの道は広くなった。最近では2012年にワイルドカードの枠が増え、30チーム中10チームが進出。上のランキングは「WS未経験」だが、これを「PS未経験」とすると5位のアーニー・バンクスがトップに躍り出る。2位以下も、PSが“狭き門”だった1980年代以前の選手たちだ。
ちなみに、現役の野手で最もPSから遠ざかっているのは、マリナーズのカイル・シーガー。メジャー8年目・1071試合のプレーで未だに出場ゼロ。これに続くのが、今季からヤンキースに移籍したジャンカルロ・スタントンの1054試合だ。現役野手で通算1000試合以上に出場しながらPSに進んだことがないのは、この2人だけである。
シーガーはデビューからマリナーズ一筋。上述の通りチームは2001年を最後にPSから遠ざかっており、当然といえば当然のことか。スタントンも昨季までマーリンズに所属していたため縁がなかったが、今季は両選手ともここまで勝率6割超えと好調なチームにおり、それぞれの地区で首位を争う位置につけている。
2人は悲願である“いつもより長いシーズン”を戦うことができるか。今後の両選手に注目だ。
文=八木遊(やぎ・ゆう)