ソフトバンクの新方程式
首位から3ゲーム差の3位につけているソフトバンク。相次ぐ負傷者の影響もあり、ここまで苦しい試合が続いているが、現在3連勝中と、2連覇へ向け上昇気配を見せている。
サファテや岩崎翔といった“リリーフ陣の柱”が離脱するなか、モイネロや森らと共にソフトバンクの勝ちパターンの一端を担っているのが、今季ブレイクを果たした加治屋蓮だ。ここまで両リーグ最多の35試合に登板し、チーム最多の13ホールドを記録し、防御率は1.67とセットアッパーとして安定した投球を続けている。
ソフトバンクは66試合(24日終了時点)を消化しており、加治屋は2試合に1回以上登板していることになる。これを1シーズンに換算すると、75試合という驚異的なペース。ソフトバンクの球団記録は昨季、岩嵜翔がマークした72試合(72回1/3)なので、チーム記録更新の可能性も十分に考えられる。
日本記録は阪神の久保田
ちなみにシーズン登板数の日本記録は2007年に久保田智之(当時阪神)がマークした90試合。その久保田に次ぐ歴代2位が2005年の藤川球児(阪神)で80試合と10試合も差があることから、久保田の90試合登板がいかに並外れた数字であるかがわかる。
07年の阪神といえば、前年オフに絶対的エースだった井川慶が抜けた影響もあり、規定投球回数を満たした投手が一人もいなかった。そのしわ寄せが救援陣、特に久保田に行ってしまった格好だ。
90試合に登板した07年の久保田は、成績もすごかった。セットアッパーに徹し、セーブこそなかったが、9勝3敗、46ホールド、防御率は1.75。すべて救援登板だったにもかかわらず投球回数はチーム2位の108イニングに達した。
メジャーでは100試合超えも
一方、シーズン162試合制のメジャーの最多登板記録は何試合なのだろうか? まず、シーズン90試合以上に登板した投手の数を調べると、意外!?と少なく5人しかいない(5人がのべ9度記録)で、メジャーの歴代最多は1974年にマイク・マーシャル(当時ドジャース)が記録した106試合だった。長いメジャーの歴史のなかでもシーズン100試合以上に登板したのはこの年のマーシャルだけである。
さらに驚くことに、この年のマーシャルのイニング数は、208回1/3と200イニングを上回っていた。106試合はすべてリリーフで、15勝12敗、リーグ最多の21セーブを挙げ、防御率はリーグ4位の2.42。マーシャルは、救援専門投手としては初めてサイヤング賞にも輝いている。
ドジャースは、その年リーグ優勝を果たし、ワールドシリーズにも出場したが、アスレチックスに1勝4敗で敗れ、世界一はかなわなかった。マーシャルはというと、ポストシーズンでも9試合中7試合(ワールドシリーズは全5試合に登板)に登板し、防御率0.75とフル回転の活躍を見せた。
久保田の90試合とマーシャルの106試合は、ともにしばらく破られることはないだろう。近年における日本の最多登板数は70試合前後で、メジャーは80試合前後。どちらも多くて2試合に1登板のペースとなっている。
▼ 直近5シーズンの日米最多登板者と登板数
<2017年>
日:72試合 岩嵜 翔(ソフトバンク)
米:79試合 P.モイラン(ロイヤルズ)
79試合 B.ショー(インディアンス)
<2016年>
日:70試合 秋吉 亮(ヤクルト)
70試合 S.マシソン(巨人)
米:82試合 B.ハンド(パドレス)
<2015年>
日:74試合 秋吉 亮(ヤクルト)
米:81試合 K.シーグリスト(カージナルス)
<2014年>
日:72試合 福谷浩司(中日)
米:80試合 B.ショー(インディアンス)
<2013年>
日:71試合 西村健太朗(巨人)
米:80試合 J.ペラルタ(レイズ)
文=八木遊(やぎ・ゆう)
※26日20時15分、記事中の岩嵜翔投手の登板数に誤りがございましたので訂正いたしました。「71試合」と誤って表記していたのを「72試合」に訂正しております。