コラム

アリゾナの奇跡?平野佳寿、ただいま奮投中

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セットアッパーとして好投を続けている平野(Dバックス)

白球つれづれ2018~第18回・平野佳寿のアメリカンドリーム


 このコラムが読者の目に触れる頃、快記録はストップしているかもしれない。いや、さらに数字を伸ばして日本人メジャーリーガーのトップに君臨しているかもしれない。それでも触れておきたいのがアリゾナ・ダイアモンドバックスに所属する平野佳寿の活躍ぶりだ。

 ただいま(日本時間7月2日現在、以下同じ)25試合連続無失点記録を継続中。歴代日本人投手の同記録ではマリナーズ時代の長谷川滋利と並び、その上にはレッドソックス時代の上原浩治(現巨人)の27試合があるのみ。「あと2試合」だから今週中にも達成可能な数字である。

 今季、日本からメジャーの門を叩いたのは大谷翔平(エンゼルス)、牧田和久(パドレス)と平野の3選手。中でも「二刀流」大谷への注目度は高く、次いで過去の日米野球などの実績から面白い存在と目されたのが牧田。最も評価の低かったのが平野と言っても過言ではない。

 オリックス時代の2011年に最優秀中継ぎ投手、2014年には40セーブを記録して最多セーブのタイトルを獲得したが、近年は大事な場面で痛打されることも多く、34歳の年齢と重ね合わせると「全盛期は過ぎた」という見方がもっぱら。メジャーへの挑戦は「無謀」という声まで聞かれた。

 キャンプでのシート打撃やオープン戦の序盤では、打ち込まれて一軍定着すら危ぶまれた。それが、メジャーの水に慣れるにしたがってその評価は急上昇。開幕直後は敗戦処理の起用もあったが、徐々に首脳陣の信頼を勝ち取り今では貴重なセットアッパーを任されるまでになった。


希少価値の高いフォーク


 平野の快進撃を支えているのは伝家の宝刀・フォークボールだ。

 自身も「フォークがなければ13年もプロでやれていなかったし、メジャーにも来ていなかった」と振り返る。

 京都・鳥羽高時代は甲子園出場も故障からベンチ外。京産大時代は自慢の快速球を武器に404奪三振のリーグ記録を打ちたてるも、フォークとの出会いはプロ入り後だ。レベルの高い打者を打ち取るには新たな武器を手に入れる必要があった。最初は野茂英雄や佐々木主浩らの握りを雑誌で勉強、数年後の春季キャンプで臨時コーチを務めた野茂から効果的な使い方を教わった。

 奇しくも、野茂や佐々木が駆使したのは正統なフォーク。ボールをフォークで突き刺すように挟んで投げる。これに対して近年の主流はSFF(スプリット・フィンガード・ファストボール)で浅めに挟んでストレートに近い角度から落としていく。

 大谷や田中将大、さらに多くのメジャー投手も今ではスプリットを駆使するケースが多い。つまり、かつての野茂流フォークを投げる投手は少なくなっている分、平野のお化けフォークは希少価値があるわけだ。加えて、平野はカウントを取りに行く場面と三振を取りに行く場面で2種類のフォークを使い分ける。

 メジャーの打者は好球必打で初球から強振してくるので日本より見逃されることも少ない。各球団もこのフォークの対策を練ってくるが、今度はフォークを意識させておいて150キロ近いストレートの出し入れが効果的となる。ここまでは、平野の思い通りの投球が出来ている。

 「メジャーでも流行した時期はあったが、今ではフォークボールは珍しい。しっかり操れる投手がいたら活躍できる」とダ軍の投手コーチ、M・ブッチャーも太鼓判を押す。


唯一の明るい話題!?


 アリゾナはこの時期から40度近い炎熱の地だ。本拠地のチェイスフィールドも打球が飛びやすく打者有利な球場として定評がある。チームはナリーグ西地区の首位を快走中。いくつもの困難な条件を克服して、この位置にいるのはルーキー・平野の存在抜きにはあり得ない。

 大谷、ダルビッシュ有の戦線離脱に田中や前田健太の戦績もパッとしない。メジャー報道に頭を抱えるマスコミにとっても、今や平野は唯一の明るい話題である。意外!?な男にスポットライト。平野のアメリカンドリームはこれからが本番を迎えようとしている。


文=荒川和夫(あらかわ・かずお)
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