投手にダメージを与えるやっかいな存在
華やかなオールスターゲームも終わり、2018年のプロ野球もいよいよ後半戦に突入する。猛暑が続く近年、重要視されているのは投手陣だろう。連戦が続くなかで投手をいかに温存するかが各チームにとっての懸案事項となり、特にブルペン陣が脆弱なチームほど後半戦で成績を落としやすいのは明らかである。
そういったこともあり、なるべく球数をかけずに打者を打ち取りたいところだが、この時期やっかいになるのが「粘る」打者たちである。追い込まれても懸命に粘って投手を疲弊させ、甘く入った球を確実にとらえていくことで数字を上げるのはもちろんのこと、「簡単には打ち取られない」という姿勢は、チームにも大きく貢献することだろう。さほど目立たない部分もあるが、暑い夏場だからこそ効果を発揮するという見方もできる。なかでも3ボール2ストライクのフルカウントで結果を残せば、投手がこれまで費やした球数も労力も徒労に終わるため、投手としてもかなり堪えるはずだ。
そこで今回は、3ボール2ストライクのフルカウントからの打率が上位の選手たちをランキング形式にして調べてみた。
ロッテは“粘り打ち集団”!?
対象としたのは前半戦(7月12日)終了時点で規定打席に到達していた打者。カウント3ボール2ストライクという状況に限っての打率で、上位5人を挙げた。まずはパ・リーグの選手たちを見てみよう。
【パ・リーグ編】
1位 .407 田村龍弘(ロッテ)
・27打数11安打
2位 .368 秋山翔吾(西武)
・38打数14安打1本塁打
3位 .364 井上晴哉(ロッテ)
・33打数12安打4本塁打
4位 .355 中村奨吾(ロッテ)
・31打数11安打
5位 .333 近藤健介(日本ハム)
・48打数16安打
5位 .333 上林誠知(ソフトバンク)
・21打数7安打1本塁打
秋山翔吾、近藤健介、柳田悠岐の3名が打率.350のラインで首位打者争いをしているが、フルカウントの状況に限ると、1位に躍り出たのはロッテの正捕手・田村龍弘。捕手というポジション柄、投手心理を読むのに長けていることが功を奏したのか、リーグでは唯一の打率4割超えを果たしている。
また、3位の井上晴哉は両リーグ併せても最多の4本塁打をフルカウントからマーク。どんなスラッガーでも、追い込まれたらフルスイングはしにくくなるが、井上が2ストライクをとられてから放った本塁打は全16本塁打中10本を数える。井上の意外な強みである。そしてランキング中6人中、半数の3人をロッテの選手が占めているというのも興味深かった。
セのトップは意外な…?
続いて、セ・リーグのフルカウント打率上位5人を見てみよう。
【セ・リーグ編】
1位 .455 高橋周平(中日)
・22打数10安打
2位 .389 松山竜平(広島)
・18打数7安打1本塁打
3位 .375 坂口智隆(ヤクルト)
・32打数12安打
4位 .333 糸井嘉男(阪神)
・21打数7安打
4位 .333 中村悠平(ヤクルト)
・12打数4安打
パ・リーグは秋山翔吾、近藤健介らの打率上位の選手が名を連ねていたが、セ・リーグの上位5人の内、通常時の打率がもっとも高いのは4位の坂口智隆。フルカウントからの打率が.375はかなりのハイアベレージだが、それをはるかに上回るのがなんとセ・リーグ打率22位、通常時は.264しか打てていない高橋周平だった。
高橋の2ストライク後の打率をトータルしてみると.243とそれほどでもないが、2ボール2ストライク以降の打率はなんと.438。今季は主に下位打線を打つことが多い高橋だが、この粘り打ちの技術を見れば、これからの活躍にも期待が持てるかもしれない。
ちなみに、セ・リーグの打者たちのフルカウントからの最多本塁打は坂本勇人、筒香嘉智、バレンティンらが放った2本が最多だった。セ・リーグ本塁打争いをしている筒香、バレンティンの両者が入るのはさすがだが、それでも2本塁打が精いっぱいというところを見ると、あらためて井上晴哉のすごさがよくわかる。
調べてみると意外な選手が台頭するフルカウント打率。これからの暑さのなかで、彼らがどこまで粘りヒットを積み重ねるかにも注目してみたい。
文=福嶌弘(ふくしま・ひろし)
※訂正
初出時に「上林誠知」選手と「高橋周平」選手の名前の記載に誤りがありましたので訂正いたしました。
申し訳ございません。
(7月16日19時30分)