コラム

逃げるか差すか!? 「積み上げ系タイトル」本塁打王&最多勝の行方

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広島・大瀬良大地

積み上げ系は先行逃げ切りが必勝スタイル?


 2018年のプロ野球も、これから後半戦に突入していく。ペナントレースの優勝争いが白熱する一方で、もう少しすると気になり出すのが個人タイトルの行方だ。優勝を争っているチームの選手はもちろんのこと、自力優勝が消滅したチームの選手も、持てる力のすべてを出し切ってくる。

 安打1本や1失点でガラッと数字が変わる首位打者や防御率は計算が必要なので一目瞭然とはいかないが、本塁打王や最多勝争いなどのいわゆる「積み上げ系」のタイトルは単純に勝利数や本塁打の数で競うため、非常にわかりやすく、なおかつ数あるタイトルのなかでも目立つものでもある。

 かつての金城龍彦や昨年の宮﨑敏郎のように、首位打者はときとしてシーズン前はノーマークだった選手が規定打席に到達するや否や獲得するというケースがあるが、本塁打や勝利数は減らないだけに、シーズン前半からリードしたほうがタイトルを獲得しやすい印象がある。

 そこで今回は、本塁打王と最多勝の「2大積み上げ系タイトル」について、過去5シーズンの前半戦と後半戦の数字を振り返りながら、実際のところはどうなかを調べてみた。


史上初の記録を打ち立てたメヒアの爆発力


 過去5シーズン(2013年~2017年)の両リーグの本塁打王と最多勝投手の前半戦と後半戦の本塁打数と勝利数を比較。前半戦トップのまま逃げ切った年の場合はその1名だけ、2位以下の選手の逆転があった年は、その選手の成績も掲載した。まずは、本塁打王から見ていきたい。

▼ 2013年
セ1位:バレンティン(ヤ)60本<32/28>
――――――
パ1位:アブレイユ(日)31本<21/10>
前1位:中田 翔 (日)28本<22/6>
※中田は前半戦1位⇒シーズン2位

▼ 2014年
セ1位:エルドレッド(広)37本<29/8>
――――――
パ1位:メヒア (西)34本<13/21>
パ1位:中村剛也(西)34本<14/20>
前1位:ペーニャ(オ)32本<21/11>
※ペーニャは前半1位⇒シーズン3位

▼ 2015年
セ1位:山田哲人(ヤ)38本<19/19>
前1位:畠山和洋(ヤ)26本<19/7>
※畠山は前半1位タイ⇒シーズン2位
――――――
パ1位:中村剛也(西)37本<26/11>

▼ 2016年
セ1位:筒香嘉智(De)44本<22/22>
前1位:山田哲人(ヤ)38本<29/9>
※山田は前半1位⇒シーズン2位
――――――
パ1位:レアード(日)39本<25/14>
前1位:メヒア (西)35本<27/8>
※メヒアは前半1位⇒シーズン2位

▼ 2017年
セ1位:ゲレーロ (中)35本<23/12>
――――――
パ1位:デスパイネ(ソ)35本<21/14>
前1位:柳田悠岐 (ソ)31本<23/8>
※柳田は前半1位⇒シーズン3位

 過去5年の結果を見ると、セ・リーグは2016年以外すべて前半戦のトップが逃げ切り、一方でパ・リーグは2015年の中村剛也以外は、すべて前半戦トップが失速してタイトルを逃している。ちなみに、トップが逃げ切れなかった4シーズン中3回は前半戦で2位だった選手が逆転。その差は2本以内という接戦だった。

 唯一の例外が2014年のパ・リーグだ。この年はペーニャが前半戦だけで21本塁打を放ったものの、後半の本塁打は11本。一方で爆発したのが、中村剛也とメヒアの西武勢だった。

 本塁打王の常連である中村はともかく、メヒアはこの年の4月30日に入団し、デビューは5月15日という遅さ。それを考えれば、前半戦で13本塁打(パ・リーグ6位タイ)でもすごいことなのだが、後半は63試合で21本塁打と約3試合に1本のペースで本塁打を量産し見事にタイトルを獲得。途中入団の選手による本塁打王の獲得は史上初の快挙となった。


最多勝争いはベテランに分がある?


 続いては、過去5シーズンにおける最多勝争いを見てみよう。

▼ 2013年
セ1位:小川泰弘(ヤ)16勝<10/6>
――――――
パ1位:田中将大(楽)24勝<13/11>

▼ 2014年
セ1位:メッセンジャー(神)13勝<8/5>
セ1位:山井大介(中)13勝<7/6>
前1位:菅野智之(巨)12勝<9/3>
前1位:前田健太(広)11勝<9/2>
前1位:井納翔一(De)11勝<9/2>
――――――
パ1位:金子千尋(オ)16勝<9/5>
前1位:西 勇輝(オ)12勝<11/1>

▼ 2015年
セ1位:前田健太(広)15勝<8/7>
前1位:大野雄大(中)11勝<9/2>
――――――
パ1位:大谷翔平(日)15勝<10/5>
前1位:涌井秀章(ロ)15勝<6/9>

▼ 2016年
セ1位:野村祐輔(広)16勝<11/5>
――――――
パ1位:和田 毅(ソ)15勝<9/6>
前1位:石川 歩(ロ)14勝<9/5>
前1位:武田翔太(ソ)14勝<9/5>
前1位:有原航平(日)11勝<9/2>
前1位:則本昂大(楽)11勝<9/2>

▼ 2017年
セ1位:菅野智之(巨)17勝<9/8>
――――――
パ1位:菊池雄星(西)16勝<8/8>
パ1位:東浜 巨(ソ)16勝<8/8>
前1位:則本昂大(楽)15勝<9/6>

 本塁打王と比べると、逆転が多い印象の最多勝争い。投手の勝ち星は、自身だけが打てばいい本塁打とは異なり、援護する野手の協力も必要とするためか、差がつきにくいようだ。

 それでも、前半戦で2桁勝利を挙げていれば最多勝は堅そうなものだが、2014年の西勇輝は前半戦で11勝を挙げたものの、後半はまさかの1勝止まり。この年、オリックスは終盤まで優勝を争っていたが、結果的に西のスランプが誤算となった。

 そしてもうひとつ特筆すべき事項が、前半戦で勝ち星が横並びとなっていた状況で抜け出した、もしく2位以下が逆転してタイトルを獲得した場合、プロ入り10年目以上のキャリアを誇るベテラン投手というケースが多かったことだ。

 前半戦こそ伸び盛りの若手が勢いで勝ち星を稼ぎ、シーズンが佳境に差し掛かってくるとベテランが本来の力を見せるといったところか。そうした傾向が出ているのは面白い部分かもしれない。


 さて、今シーズンは前半戦のトップがそのまま逃げ切るか、それとも逆転があるのか――。ペナントレースの行方とともに、タイトル争いからも目が離せなくなりそうだ。

▼ 2018前半戦本塁打数/後半戦本数
<セ・リーグ>
1位:筒香嘉智  (De)19本/+2
1位:バレンティン(ヤ)19本/+3
3位:山田哲人  (ヤ)18本/+4
4位:丸 佳浩  (広)17本/+3
5位:ロペス   (De)16本/+1
5位:宮﨑敏郎  (De)16本/+0
5位:岡本和真  (巨)16本/+1
――――――
<パ・リーグ>
1位:山川穂高 (西)23本/+3
2位:柳田悠岐 (ソ)20本/+3
3位:デスパイネ(ソ)19本/+1
4位:浅村栄斗 (西)18本/+3
5位:中田 翔 (日)17本/+1


▼ 2018前半戦勝利数/後半戦勝数
<セ・リーグ>
1位:大瀬良大地  (広)10勝/+1
2位:ガルシア   (中)9勝/+1
2位:メッセンジャー(神)9勝/+1
2位:菅野智之   (巨)9勝/+0
――――――
<パ・リーグ>
1位:ボルシンガー(ロ)11勝/+1
2位:石川 歩  (ロ)9勝/+0
2位:アルバース (オ)9勝/+0
2位:多和田真三郎(西)9勝/+0


文=福嶌弘(ふくしま・ひろし)
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