コラム

【アジア大会】社会人ジャパンが韓国の“プロ軍団”に完敗…その現実と課題

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アジア競技大会決勝で韓国に敗れ準優勝に終わった社会人日本代表

圧倒的な韓国の力


やはり韓国の壁は厚かった。いや、プロの壁と言った方がいいかもしれない。

 インドネシア・ジャカルタで行われたアジア大会野球競技。1992年の広島大会から始まったこの競技のメダル争いは、常に日本、韓国、台湾の間で繰り広げられてきた。これに続く「万年4位」の中国のマクラーレン監督は、この3チームを「ビッグ3」と表現し、大会後、差は縮まってきてはいるものの、その背中はまだまだ遠いことを認めた。

 その「ビッグ3」の中でも、群を抜いた強さを誇るのが韓国だ。今大会を除く過去6大会で4個の金メダルを獲得し、今回の優勝により3連覇を果たした。一方の日本は、金メダルを手にしたのは自国開催となった広島大会のみ。同じく金メダル1回の台湾とは、今回の準優勝で銀メダルの数(3度)もようやく追いついた。

 兵役免除の関係から韓国がトッププロによる「ドリームチーム」でこの大会に臨み、また、台湾もプロリーグに支障をきたさない範囲で社会人と若手プロの混成チームで参加してくる中、社会人選手のみの代表チームで参加する日本は、どうしても苦戦を強いられる。


社会人野球にとってのアジア大会


「韓国は社会人野球がないですから。でも、我々にとってもトッププロと対戦できる貴重な機会。彼らを倒すことは我々の大きな目標です」

 日本代表の石井章夫監督は、決勝戦後のインタビューで、社会人野球におけるアジア大会の意義ついて触れた。

 考えてみれば、国際大会へのプロ参加容認以来、社会人選手にとっての晴れ舞台であった五輪もプロに奪われた格好となっている。グローバル経済の中、「実業団」という形式のスポーツが曲がり角を迎える中、社会人野球にとってのアジア大会は、プロが参加する韓国という“巨人”と対戦することで、自らの存在価値をアピールし、レベルアップする絶好の機会と言える。

 私は今回、中国を含めた「アジア四強」が相まみえるスーパーラウンドから観たが、社会人ジャパンの戦いからは、石井監督はじめ、社会人球界が目指してきた歩みとその課題を垣間見ることができた。


明白な課題


 大学をはじめとするアマのエリート選手のアメリカ流出に頭を悩ませている台湾は、この10数年、成長が頭打ちになった感がある。プロが参加するといっても、国内リーグが佳境に入り、プロの主力選手が抜け落ちている台湾のハードルは、社会人ジャパンにとってさほど高いものではなくなっているのが現状だ。

 一方、“巨人”韓国の壁はやはり高いと言わざるをえない。石井監督が合格点を与えたように、スーパーラウンドでは5点を奪われたものの、決勝では3失点に抑えたディフェンス面は、十分に韓国のプロ軍団とも伍することができた。しかし、2試合で喫した計8失点のうち、ホームランによる失点が「4」。いずれもソロだったが、パワーのある韓国のトッププロ相手にどう対処していくのか。ここが今後の国際大会に向けたテーマになってくるだろう。

 一方、野手のフィールディングに関しては、韓国と比べても社会人ジャパンの方が勝っていた印象だ。決勝では、韓国の強打のセカンド、アン・チホンの拙守が目についたのに対し、日本のショート、青柳匠(大阪ガス)は華麗な足運びで三遊間の打球を再三にわたりさばき、韓国ファンだけでなく、アジア最高レベルの野球を一目見ようとスタンドを埋めた地元インドネシアの野球ファンをうならせていた。

 となれば、課題はおのずから浮かび上がってくる。それは打力だ。これはアマチュアだけでなく、トッププロを含めた日本の課題である。


韓国と日本の差


 今大会、韓国は投手陣もプロのトップを揃えてきた。このレベルの投手相手となると、台湾戦でヒットを重ねてきた打線も鳴りを潜めてしまう。とくに決勝は、スタンドから見ていても、得点どころかヒットが出る気配すらしなかった。それに対し韓国は、メジャー帰りの4番パク・ビョンホがスーパーラウンドに続いて決勝でも特大のホームランを放ち、試合を決定づけた。

 先発を務めた富山凌雅(トヨタ自動車)が初回にいきなりの連続四球。そこから先制を許すと、堀誠(NTT東日本)が急遽リリーフのマウンドへ。後続を断ち、2回はスローカーブを交えながら韓国打線を3者三振に斬ってとったが、3回二死からカーブの連投を警戒して投じたストレートが少し高く入ってしまう。すると韓国の主砲パクはこの失投を見逃さず、センターバックスクリーンに特大のホームランを放り込んだ。

 強烈な一発を被弾した堀は、「ストレートが速いわけではないので、しっかりコントロールしないとプロの打者には対抗できないことがわかりました」と振り返ったが、この日の球速は、韓国先発のヤン・ヒョンジョンにひけをとるものではなかった。しかし、同じような球速でも韓国の打者はコントロールミスを見逃さず、韓国の投手は簡単にコントロールミスを犯さない。それに対し、日本の打者は数少ない甘い球をものにすることができなかった。

 結局、決勝での韓国の得点は、初回の連続四球によるランナーが後続のヒットで帰ったものと、パクのホームランによる計3点。初回の連続四球なければ、3回の一発が回避できていれば、という「たられば」を言うのはたやすいが、それほど簡単な話でもない。なぜなら、決勝での日本はホームを踏むことすらできなかったからだ。


日本の進む道は!?


 試合後、石井監督は打線の強化について、つなぐ打線の育成ではなく、長打力をつける必要があるという目標を掲げた。これまで「スモールベースボール」をお家芸としてきた日本だが、「スモールベースボール」については、現在世界中の野球界がこれを導入していく傾向にある。そういう世界野球の潮流の中、日本球界は逆に「大砲」の育成に乗り出さねばならないことを、プロの指導者以上に世界を知っている石井監督は示した。

 石井監督の口からは、「五輪」の言葉も出てきた。世間は来る東京五輪でのオールプロによる侍ジャパンが、悲願の金メダルを獲得し世界の頂点に立つことを夢見ているが、元来五輪はアマチュア選手の晴れ舞台である。監督だけでなく、選手の口からも慎重に言葉を選びながらも「五輪」の言葉は多く出てきた。

 東京五輪については、アマチュア球界も「オールジャパン」の一員として選手を送り出すことを切望している。プロに負けないスラッガーの育成は、世界を知る社会人ジャパンから東京五輪に選手を送り出す道ではないか、そういうアマチュア球界の今後の方向性が今回のアジア大会からはうかがえた。


文=阿佐智(あさ・さとし)
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