チームの精神的支柱
2018年、ヤクルトはひとりの男の加入により大きく生まれ変わった――。
昨シーズンは球団ワーストとなる96敗を喫する屈辱を味わい、リーグ最下位に低迷していたヤクルト。しかし、ツバメ軍団はその屈辱を乗り越えて、今季はセ・パ交流戦で最高勝率に輝くなど飛躍。シーズン佳境を迎えた9月に入っても勢いは衰えることなく、現在はセ・リーグ2位争いを繰り広げている。
その要因を探してみると、看板選手である山田哲人の復調や、リリーフ陣の整備・再構築など、思い当たるフシはいくつかある。だが、そのなかでもっとも大きいと言っていいのが、青木宣親の加入だろう。
2011年オフに海を渡って以来、7年ぶりの古巣復帰となった青木。かつては球界を代表する安打製造機としてチームを牽引していたが、そんな男も36歳になった。
今季序盤はかつての打撃は影を潜め、5月末の時点で打率.265・2本塁打・18打点とはっきり言って物足りない成績。キャンプ合流が遅れたことによる調整不足か、はたまた久々の日本球界でのプレーになかなかアジャストできなかったのか…。加えて死球が多かったこともあり、体調面での不安も指摘された。
しかし、6月に入ると全盛期を彷彿とさせるような姿に変身する。月間打率.388をマークする大暴れで月間MVPを獲得すると、その後は夏場に入っても調子を落とすことなく安打を量産。111試合の出場で打率.328と首位打者争いに顔を出すまでになった。
好調な青木が“攻撃的2番”として定着したことにより、1番・坂口智隆からはじまって3番・山田哲人、4番・バレンティンへと続く恐怖の打線が完成。また、随所で闘志あふれるプレーを見せ、チームを鼓舞する姿が印象的。負けていても決して諦めない雰囲気をつくり、何度となく終盤の逆転劇を呼び込んできた。
頼れる“メジャー帰り”の選手たち
復帰1年目から精神的支柱として君臨。まさにチームを生まれ変わらせた青木であるが、過去にもメジャー帰りの選手がチームに好影響をもたらした例があるので取り上げてみたい。
例えば、阪神で日本球界に復帰した城島健司。かつてはダイエー・ソフトバンクの正捕手として活躍を見せ、初めて捕手としてメジャーリーグに挑戦。2010年に阪神と契約を結んで日本球界復帰を果たすと、1年目から打率.303・28本塁打・91打点の大暴れ。ゴールデングラブ賞も獲得するなど、攻守両面で阪神を盛り上げた。
ちなみに、復帰初年度に打率3割超えを記録したのは城島が唯一。打撃タイトルを獲得したという選手もおらず、今季の青木に期待が高まる。
また、“チームを変えた”という意味では新庄剛志も忘れてはならない。
北海道移転初年度というチームが大きな転換点を迎えたタイミングで日本ハムに入団したSHINJO(当時の登録名)は、「札幌ドームを満員にして、チームを日本一にする」と宣言。Bクラスに甘んじることも多かったチームを明るく盛り上げ、復帰初年度は優勝こそならなかったものの、チームの順位は前年の5位から3位へと浮上。そして3年目の2006年には有言実行の日本一に輝いた。
城島のようにプレーでチームを盛り立てながら、新庄のように姿勢でもチームを牽引する姿を見せる青木。9月7日の試合で途中交代している点が心配されるが、これからのクライマックスシリーズ争いはもちろん、その先のポストシーズンを戦っていく上で男の存在は不可欠だ。
残り1カ月ちょっとのシーズン。ヤクルトと青木宣親から目が離せない。