日本人ルーキー初の20号
気がつけば9月も下旬に差し掛かり、メジャーのペナントレースも佳境。各地で地区優勝チームが決まり、ポストシーズンへと進むチームも決まり始めた。
大谷翔平が所属するエンゼルスは後半戦早々に“売り手”へと回り、主力選手を放出。ポストシーズン出場は叶わなかったものの、その中で注目を集めているのが大谷の新人王への挑戦だ。
9月に入って猛打爆発。現地9月4日のゲームから3戦連発の4本塁打をマークすると、15日のマリナーズ戦では今季20号の本塁打。日本人選手のデビューイヤー記録を更新している。この道中では右肘の新たな損傷が発覚。投球はおろか手術を受けるかどうかの決断を迫られる場面もありながら、いまは打者に専念して成績を伸ばしている。
メジャーの「ルーキー資格」をおさらい
9月はじめにMLB公式サイトが実施した新人王アンケートで、大谷はア・リーグ3位にあたる85ポイントを獲得。ヤンキースの新星ミゲル・アンドゥハー(1位/93ポイント)とグレイバー・トーリス(2位/88ポイント)には遅れをとったものの、その差はわずか。このあとの積み上げ次第では十分に逆転も可能であろう。
もしも大谷が新人王に輝けば、日本人選手では野茂英雄、佐々木主浩、イチローに次ぐ4人目の快挙になるが、まずはメジャーリーグの「新人王の資格」について振り返っておこう。
【MLB・ルーキー資格】
・前年までの出場が、打者:打数130以内/投手:投球回50イニング以内
・25人枠(登録選手枠)の登録期間が45日以内
※9月1日から拡大される40人枠については対象外
日本も同じであるが、純粋な1年目の選手以外でも、この規定に当てはまればルーキーとみなす。一時物議を醸したこともあったが、国外のリーグで実績を残している選手も同様で、年齢に関わらず新人王の資格をもつ。
新人王を決めるのは、記者による投票。全米野球記者協会(BBWAA)に所属する記者が1位から3位までの選手をえらんで名前を記入し、1位が5点、2位は3点、3位は1点で集計。最も得点を集めた選手が『ルーキー・オブ・ザ・イヤー』に輝くという流れだ。
単純に名前が挙がった数ではなく、投票の“合計点”で決するという部分がポイント。例えば2003年のア・リーグではアンヘル・ベロアと松井秀喜が熾烈な争いを繰り広げたが、最終的にはわずか4ポイントの差でベロアがタイトルを獲得している。
大谷のライバルたち
ではここで、大谷のライバルと目されるア・リーグの新人王候補たちを見てみよう。
【ア・リーグ新人王候補】
▼ ミゲル・アンドゥハー(ヤンキース)
139試 率.298(538-158) 本25 点84
▼ グレイバー・トーリス(ヤンキース)
113試 率.280(397-111) 本23 点71
▼ ジョーイ・ウェンデル(レイズ)
129試 率.302(451-136) 本7 点53
シーズン序盤はヤンキースのトーリスが突っ走っていたものの、戦線離脱を挟んで以降はなかなか調子が上がらず。その間にチームメイトのアンドゥハーが猛アピールを見せ、3割・30本も見えるところまで持ってきた。
また、後半戦に入ってレイズのウェンデルが台頭。3割を超える打率をマークしているが、こちらはヤンキースの2人と比べて長打力という点で見劣るところがあり、ややパンチ不足な部分は否めない。
対して今季の大谷は10試合に登板して4勝2敗、防御率3.31という成績。故障もあって物足りなく映るものの、打者としては94試合に出場して打率.292、20本塁打で55打点。ふたつの道を並行して進めるという形のために評価は難しくなるが、それを補って余りあるだけのインパクトを残したのは確かだ。
数字が別れる分、評価が難しい大谷の成績。そこでMLBのデータ・記録サイト『Baseball Reference』が算出している「162 Game Avg.」(=年間フル出場した場合の概算)を見てみると、以下のようになる。
▼ 大谷がどちらか一本でフルシーズン出場したら…?
<投手>
34試(176.0回) 14勝7敗 奪三振214 防3.31
<打者>
162試合 率.291(496-145) 本35 点96
※フルシーズン=投:34試合先発/打:162試合出場した場合
もちろん、あくまでも「フルシーズン出場した場合の概算」であるのだが、こう見ると1年目から実に堂々たる活躍を見せていることが分かる。
“二刀流”という前例がないサンプルが出現しているだけに、例年以上に記者たちの頭を悩ませそうなア・リーグの新人王投票。果たして最後に笑うのは誰なのか…。最後の最後まで目が離せない。