しかも全員20代…
ヤンキース打線の勢いが止まらない。
今季の1試合平均得点「5.18」はレッドソックスの「5.32」に次ぐメジャー2位。特に本塁打数は249本に達し、すでにチーム記録を更新している。1997年にマリナーズがマークしたメジャー記録のシーズン264本にも迫る勢いだ。
そのヤンキース打線だが、今季は決して順風満帆だったわけではない。アーロン・ジャッジとゲーリー・サンチェスがケガのため長期離脱を余儀なくされ、現時点で2人の本塁打数はジャッジが26本、サンチェスは16本と、ともに昨季のほぼ半数である。昨季は59本塁打を放った移籍1年目のジャンカルロ・スタントンも35本塁打と、その数を大きく減らしている。
一方で、20代前半の若手が台頭したシーズンでもあった。その代表格が、大谷翔平(エンゼルス)と新人王を争うミゲル・アンドゥハーとグレイバー・トーリスの2人。気が付けば、今季のヤンキースでは打者5人がすでに25本塁打以上を記録している。
【2018ヤンキース・本塁打ランキング】
35本 ジャンカルロ・スタントン(28歳)
27本 ディディ・グレゴリアス(28歳)
26本 アーロン・ジャッジ(26歳)
25本 ミゲル・アンドゥハー(23歳)
25本 アーロン・ヒックス(28歳)
23本 グレイバー・トーリス(21歳)
ヤンキースの残り試合数は9。その間にトーリスが2本以上の本塁打を記録すれば、6人が25本塁打超えを達成。これはチーム新記録となる。ちなみに、これまでのチーム記録は2005年の5人。そう、ヤンキースが最後に世界一に輝いたシーズンである。
【2009ヤンキース・本塁打ランキング】
39本 マーク・テシェイラ(29歳)
30本 アレックス・ロドリゲス(33歳)
29本 ニック・スウィッシャー(28歳)
28本 松井秀喜(35歳)
25本 ロビンソン・カノ(26歳)
当時は26歳のカノが最年少。ロドリゲスと松井はすでに30代。他にもデレク・ジーター(35歳)、ジョニー・デーモン(35歳)、ホルヘ・ポサダ(37歳)などが名を連ね、まさに2009年のヤンキース打線は完成形だったと言えるだろう。
この後、ヤンキースは過渡期を迎える。わずか2年前の2016年を振り返ると、チーム最多本塁打は当時39歳だったカルロス・ベルトランで22本塁打という有様だった。それからたった2年で、ヤンキース打線は若返りとパワーアップに成功した形だ。
先日のレッドソックス戦では目の前で地区優勝のシーンを見せつけられたが、3連戦を2勝1敗と意地は見せた。ポストシーズンでも再戦する可能性を残しており、それが実現すれば、レッドソックスにとってもヤンキース打線は脅威となるだろう。
果たして、驚異の打線を誇るヤンキースはポストシーズンでサプライズを起こせるだろうか。
文=八木遊(やぎ・ゆう)