上位のほとんどが1960年以前
10月7日、ソフトバンク・上林誠知が大きな「壁」を打ち破った――。
ロッテ戦の4回、2死走者なしの場面で打席に入った上林が二木康太の高めに浮いた甘いフォークをとらえると、打球は左中間を真っ二つ。快足を飛ばし、余裕を持って三塁を陥れた。これで今季の上林の三塁打は14に到達。1シーズンに14本以上の三塁打を記録したのは、1953年のレインズ(阪急/16三塁打)以来、なんと65年ぶりである。
外野手から遠くグラウンドの深い位置に打球を運ぶ必要があり、打者走者のスピードも求められる三塁打は、安打のなかでもっとも数が少ない「レア」なものである。しかも、守備技術や中継技術の向上によってその数は完全に頭打ちであり、歴代のシーズン三塁打記録の上位のほとんどが1940年代、1950年代の記録で占められている。ここで、直近10年の12球団最多三塁打を記録した選手を振り返ってみる。
【直近10年12球団最多三塁打】
08年:10本 松田宣浩(ソフトバンク)
09年:13本 鉄 平(楽 天)
10年:10本 坂口智隆(オリックス)
11年:7本 鳥谷 敬(阪 神)他4選手
12年:8本 秋山翔吾(西 武)
13年:11本 鈴木大地(ロッテ)
14年:13本 西川遥輝(日本ハム)
15年:10本 秋山翔吾(西 武)
16年:9本 大島洋平(中 日)
17年:10本 源田壮亮(西 武)
上林の14三塁打は歴代4位タイ!
12球団最多の数字が2桁に届かないことも少なくない。これまで、レインズが16三塁打を記録した1953年以降のシーズン最多三塁打は13であった。1980年以降では、上記リストにもある鉄平(楽天/2009年)、西川遥輝(日本ハム/2014年)のほか、松井稼頭央(西武/1997年)、村松有人(ダイエー/2003年)のわずか4人しか到達していない。シーズン14三塁打は、現代のプロ野球において紛れもない壁であったのだ。上林はその壁を見事に打ち破り、歴代4位タイに食い込んだ。まさに、快挙と言っていいだろう。
ちなみに通算1位は、18三塁打を放った金田正泰(阪神/1951年)。来年8月で24歳とまだまだ発展途上にあり、無限の可能性を秘める上林。いつの日か、その記録を打ち破る日がくるのだろうか。
【シーズン三塁打歴代ベスト5】
18三塁打:金田正泰(阪神/1951年)
16三塁打:レインズ(阪急/1953年)
15三塁打:蔭山和夫(南海/1950年)
14三塁打:鈴木清一(セネタース/1946年)
14三塁打:上林誠知(ソフトバンク/2018年)
文=清家茂樹(せいけ・しげき)