収穫と課題の一年
2014年に25歳の若さでメジャーに挑戦した田中将大。全米屈指の人気球団・ヤンキースでの5年目を終えた。
今シーズンは12勝6敗、防御率3.75という成績。前年の13勝12敗、防御率4.74に比べると成績は良くなったといえるが、楽天時代の田中を知る者としてはまだまだ物足りないと感じてしまう。それでも、メジャー移籍後5年連続で2ケタ勝利を継続していることは立派の一言。シーズンを通しての安定感という意味では抜群だったと言えるだろう。
通算勝率.653というのは、50勝以上を記録している現役投手93人中で堂々の4位。“勝ちを計算できる投手”としてヤンキースには欠かせない先発投手となっている。ちなみに、この通算勝率で田中を上回る3人というのはクレイトン・カーショー(ドジャース)、マックス・シャーザー(ナショナルズ)、そしてデービッド・プライス(レッドソックス)というメジャーを代表するエース格の面々だ。
田中の2018年をイニング別の防御率で振り返ると、試合中盤以降に打ち込まれていたことがわかる。1~3回の防御率は2.56だが、4~6回が4.72、そして7回以降は7.56と数字は徐々に悪化している。立ち上がりは完璧でも、相手打線が2巡目、3巡目を迎えるころにつかまるケースが目立った。
また、田中にとって最も象徴的だったのが捕手別の成績だ。強打のゲーリー・サンチェスがチームの正捕手を務めているが、田中の女房役としては相性がいまひとつ。サンチェスが捕手を務めたときの田中の今季防御率は4.07となっており、これが控えのオースティン・ロマインとのコンビなら3.41、日系4世のカイル・ヒガシオカとでは2.84となる。キャッチング能力やブロッキングなどの守備面に不安があるサンチェスだが、その打撃力を考えると、来季以降も田中とバッテリーを組む試合は多くなるだろう。
通算の防御率で見ても、サンチェスのときは防御率4.26に対し、サンチェス以外だと3.26。9イニング当たりでちょうど1点の開きがある。田中にとってはサンチェスとよりコミュニケーションを取ることが重要になるだろう。
ポストシーズンでレッドソックスから一矢報いる勝利を挙げるなど、大舞台でも力を発揮した田中。ヤンキースにとって2009年から遠ざかっている世界一を成し遂げるには、田中の活躍は必要不可欠だ。来季はエースとして、メジャーでは自身初となる15勝を狙ってもらいたい。
文=八木遊(やぎ・ゆう)