コラム

どちらがお得? FA選手と人的補償を数字で比較

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広島・一岡竜司(C)KYODO NEWS IMAGES

現行のFA制度で人的補償は約半数


 本格的なオフシーズンに入り、いよいよストーブリーグがはじまったプロ野球界。今年は丸佳浩(広島)、浅村栄斗(西武)ら大物選手がFA権の行使を宣言したこともあって、例年以上にファンの注目度は高まっている。

 ご存知のとおり、FAによってチームの中心選手を失う球団は、移籍先の球団から「補償」受け取ることができる。「金銭のみ」と「人的(+金銭)」という2つの選択肢から1つを選ぶことになるが、以前は「金銭補償」を得るケースがほとんどだった。

 しかし、2008年に改正された現行のFA制度下で見てみると、ランクA(外国人選手を除く旧年俸の1~3位)とランクB(同4~10位)以上の選手のFA移籍では、延べ28件中、約半数にあたる15件で人的補償が利用されている。

 人的補償のリストにあがってくるのは、外国人選手と直近のドラフト会議で指名した新人選手を除いた“28人”というプロテクトの枠を外れた選手なので、一軍半の控え選手や未知の若手選手、そしてピークを過ぎたベテラン選手がほとんどを占める。FAで流失した主力選手の代わりとしては少し貧弱な印象もあるが、意外にも成功しているケースは多い。

 例えば、現行制度が導入される1年前の2007年オフに石井一久がFAでヤクルトから西武に移籍した際、人的補償としてヤクルトが獲得したのは福地寿樹だった。福地は翌2008年からレギュラーに定着すると、盗塁王を獲得する大活躍を見せた。福地の活躍が顕著だったこともあり、人的補償がより積極的に活用されるようになった背景もある。

 今回はFAで移籍した選手と、その選手の人的補償で移籍を余儀なくされた選手に注目してみた。


若手のデビューから再ブレイクまで


 振り返ったのは、現行のFA制度になった2008年から昨年までの10シーズン。人的補償が発生したケースにおいて、移籍した両選手の成績を比較した。まずは、2008年から2012年まで。

※カッコ内の球団は移籍前で、名称は当時のもの
※左側がFA選手で、右側が人的補償の選手
☆=現役

【2010年】
▼ ロッテ ⇔ 阪神
[FA] 小林宏之(在籍2年/42試合)
1勝5敗21ホールド 防3.00

[補償] 高浜卓也(在籍8年/187試合=現役)
率.221(367-81) 本3 点25


【2011年】
▼ 横浜 ⇔ 巨人
[FA] 村田修一(在籍6年/795試合)
率.274(2794-765) 本109 点391

[補償] 藤井秀悟(在籍3年/37試合)
13勝12敗 防3.63


▼ 巨人 ⇔ ロッテ
[FA] サブロー(在籍5年/328試合)
率.241(928-224) 本17 点105

[補償] 高口隆行(在籍2年/12試合)
率.077(13-1) 本0 点0


【2012年】
▼ オリックス ⇔ ソフトバンク
[FA] 寺原隼人(在籍6年/101試合)
16勝17敗11ホールド 防4.02

[補償] 馬原孝浩(在籍3年/67試合)
2勝5敗2セーブ・33ホールド 防3.92


▼ 阪神 ⇔ オリックス
[FA] 平野恵一(在籍3年/205試合)
率.280(776-217) 本1 点47 盗7

[補償] 高宮和也(在籍5年/91試合)
3勝1敗11ホールド 防3.97


 FA移籍を果たした選手ほどとはいかずとも、移籍先で戦力になっていることが多い人的補償選手たち。現役の高浜卓也を除くと在籍は5年以下と実働年数こそ少ないものの、馬原孝浩や高宮和也のように1シーズンフルで活躍したというケースも目立つ。

 また、高浜のように移籍をきっかけに一軍デビューを果たしたという例もあり、若手発掘という点でも人的補償は一定の成果をあげていると言えるだろう。


有望な若手選手を人的補償で放出する巨人


 大まかな傾向が見えてきた人的補償の選手たち。続いて2013年以降の選手たちを見ていく。


【2013年】
▼ 阪神 ⇔ DeNA
[FA] 久保康友(在籍4年/71試合)
29勝23敗 防3.77

[補償] 鶴岡一成(在籍3年/157試合)
率.221(312-69) 本1 点27


▼ 広島 ⇔ 巨人
[FA] 大竹 寛(在籍5年/65試合)
23勝21敗 防4.01

[補償] 一岡竜司(在籍5年/214試合)
16勝13敗6セーブ・65ホールド 防2.34


▼ 日本ハム ⇔ ソフトバンク
[FA] 鶴岡慎也(在籍4年/286試合)
率.231(549-127) 本6 点65 盗2

[補償] 藤岡好明(在籍3年途中で移籍/16試合)
1勝0敗2ホールド 防5.75


▼ 西武 ⇔ 巨人
[FA] 片岡治大(在籍4年/271試合)
率.246(858-211) 本18 点72 盗49

[補償] 脇谷亮太(在籍2年/214試合)
率.280(440-123) 本5 点44 盗8


▼ 西武 ⇔ ロッテ
[FA] 涌井秀章(在籍5年/127試合)
45勝48敗 防3.63

[補償] 中郷大樹(在籍2年/14試合)
1勝0敗1ホールド 防6.45


【2014年】
▼ ヤクルト ⇔ 巨人
[FA] 相川亮二(在籍3年/106試合)
率.264(178-47) 本4 点24 盗1

[補償] 奥村展征(在籍4年/80試合)
率.225(160-36) 本1 点9 盗1


【2016年】
▼ オリックス ⇔ 阪神
[FA] 糸井嘉男(在籍2年/233試合)
率.299(846-253) 本33 点130 盗43

[補償] 金田和之(在籍2年/44試合)
4勝1敗2ホールド 防4.91


▼ DeNA ⇔ 巨人
[FA] 山口 俊(在籍2年/34試合)
10勝10敗1セーブ・1ホールド 防4.01

[補償] 平良拳太郎(在籍2年/17試合)
6勝6敗 防4.11


【2017年】
▼ 阪神 ⇔ DeNA
[FA] 大 和 (在籍1年/113試合)
率.244(394-96) 本2 点27 盗10

[補償] 尾仲祐哉(在籍1年/12試合)
0勝1敗 防3.86


▼ 西武 ⇔ 巨人
[FA] 野上亮磨(在籍1年/25試合)
4勝4敗1ホールド 防4.79

[補償] 高木勇人(在籍1年/8試合)
1勝2敗 防8.69


 トップクラスの選手がメジャーリーグへの移籍を目指すようになったこともあり、国内FA権を行使して移籍した選手たちで大物と言えるのは涌井秀章、糸井嘉男あたり。彼らの人的補償選手は現時点であまり成果をあげているとは言い難いが、それ以外ではFA移籍選手と人的補償の選手との成績が拮抗、もしくは逆転しているケースも見受けられる。

 その代表的な例となっているのが、2013年オフに巨人が獲得した大竹寛だろう。この年のオフに広島からFA移籍で巨人に入団した大竹は、初年度こそ先発ローテーションに入り9勝を挙げたが、以降は思うような成績をあげられていない。18年シーズンは一軍ではたったの1試合の登板にとどまったのに対し、当時から期待の若手のひとりだった一岡は広島へ移籍後中継ぎとして大ブレイク。今季も広島のリーグ3連覇に大きく貢献した。リリーフ陣が総崩れとなった巨人は、一岡の放出をさぞ悔やんだことだろう。

 これ以外にも巨人は、奥村展征、平良拳太郎らブレイク前の若手を人的補償で放出し、結果的にチームの高齢化を招きつつある。丸佳浩や炭谷銀仁朗らの獲得が噂される今オフは、果たしてどういった流れになるのだろうか。


文=福嶌弘(ふくしま・ひろし)

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