コラム

小林と甲斐に見る捕手の成長

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巨人・小林誠司(C)KYODO NEWS IMAGES

白球つれづれ2018~第38回・巨人の小林とソフトバンクの甲斐に見る捕手の考察


 巨人OBでもある大物評論家・広岡達朗が今オフの原・巨人補強策にかみついている。「週刊ポスト」を引用すれば、特にFAで西武・炭谷銀仁朗獲得に対する動きに苦言を呈す。

「小林は立派なキャッチャーですよ。打てないのはコーチを含めた首脳陣のせい、彼らの怠慢です」

 ここで名前が出てくるのは正捕手の小林誠司だ。2013年のドラフト1位。甘いマスクで女性ファンも多いエリートである。入団直後から先発マスクをかぶる機会も多く球団の顔にもなりつつあったが近年は評価が急降下。今オフには前述の通り、球団が炭谷の獲得に乗り出したかと思えば、あの阿部慎之助までが来季の捕手復帰を語るほど。向こう10年は安泰と見られた小林の定位置が脅かされている理由は、一にも二にも低打率にある。

 ルーキー時代の2014年には規定打席不足ながら打率は「.255」をマークしたが2年目以降は2割をクリアするのがやっと。完全なレギュラーに定着した16年以降は「.204」に「.206」と続き今季も開幕直後こそ首位打者に躍り出る珍事?もあったが、終わってみれば「.219」の定位置。あまりの貧打に新人の大城卓三に先発の機会を奪われるケースも増えて出場試合数(138⇒119)、打席数(443⇒313)で前年を大幅に下回ってしまった。


小林は申し分ない働き!?


 秋季キャンプでも打撃向上が絶対的なノルマ。監督に復帰した原辰徳も小林への期待の大きさは変わらない。

「肩は一級品。最低でも.240近く打てば凄いキャッチャーになる」

 捕手の評価はまず、投手に信頼されるリードと相手に次の進塁を許さない強肩と堅守。この部分で小林の働きは申し分ない。今季も山口俊、菅野智之のノーヒットノーランを好アシスト。盗塁阻止率でも.341でセリーグでは3年連続のトップ。これは古田敦也(元ヤクルト)の5年連続に次ぎ森昌彦(元巨人)と並ぶセ史上2位の偉業である。だからこそ、あまりの低打率が惜しまれる。

 この秋にその強肩を武器に球界の主役に躍り出た男がいる。ソフトバンクの下剋上日本一に貢献した甲斐拓也だ。広島との日本シリーズでは6連続盗塁阻止のシリーズ記録を打ちたててMVPに輝いたのは記憶に新しい。今季の盗塁阻止率は.447と両リーグでも群を抜いている。

 小林がドラ1のエリートであることに対して、こちらは2010年の育成ドラフト6位という叩き上げ。一軍定着まで5年の時を要している。しかも昨年から先発出場が増えた背景には、ベテラン・細川亨の放出や、伸び悩む山下斐紹を楽天にトレードした球団の戦略的アシストも見逃せない。冒頭に触れた広岡の疑問ではないが、不安なポジションに外から有名選手を獲得して蓋をするのか?はたまた、ソフトバンクのように風穴を開けて活路を見出すのか?それが現在置かれている両チームの勢いと立場の違いなのだろう。


勝てば官軍負ければ賊軍


 ちなみに日本シリーズのMVP男・甲斐の打撃成績は一軍定着を果たした昨年が.232で今季は.213。つまり小林と変わらない打率しか残せていない。それでいてこれだけの印象の違いはチーム成績に尽きる。優勝して日本一になれば甲斐の貧打は致命傷にならないが、優勝争いの最中で凡退が目立てば「戦犯」とみなされる。

 パリーグはDH制だから甲斐の周りを強打者で固められるが、セリーグでは8番・小林の次は投手の打順、さらに7番打者もパッとしない成績なら下位打線は全く機能しない。広島の捕手・会沢翼が3割を打って恐怖の下位打線の核となったから余計にその差が目立ったとも言える。

 昔から強打の捕手は数えるほど少ない。野村克也(元南海)に古田、城島健司(元ダイエー)あたりか。小林が来季から急に打てる捕手に変身するとは思えない。それなら勝てる捕手として今ある長所をさらに伸ばしてやることも必要ではないだろうか?何より大切なのは育てる意思と信頼である。チームの要が揺らいでいてはV奪回もおぼつかない。


文=荒川和夫(あらかわ・かずお)
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