弱点を埋めるための西獲得も…
例年以上の盛り上がりを見せた今年のFA戦線。投手の目玉となった西勇輝は、オリックスから阪神への移籍を決断した。
プロ10年目の戦いを終えた28歳の右腕。今季は10勝13敗と負け越しはしたものの、毎年コンスタントに勝てる安定感は先発不足に泣く球団からすると大きな魅力だろう。リーグ最下位に沈み、ランディ・メッセンジャー以外の先発に頼れる選手がいないというチーム状況を考えると、阪神にとって西の獲得は弱点をピンポイントで埋める補強である。
ところが、過去に阪神にFA移籍した選手で活躍した例と言えば、金本知憲や糸井嘉男といった野手の方が目立っており、投手で考えるとなかなか名前が挙がってこないように思う。
そこで今回は、阪神にFA移籍した投手の成績を調べてみた。
先発投手の活躍事例はまさかのゼロ!?
FAで阪神に移籍した投手はこれまでに4人。彼らの移籍初年度の成績と移籍後の成績を比べてみよう。
▼ 1994年オフ
山沖之彦(オリックス→阪神)
移籍初年度の成績:一軍登板なし
阪神での通算成績:一軍登板なし(在籍1年)
▼ 1999年オフ
星野伸之(オリックス→阪神)
移籍初年度の成績:21試 5勝10敗 防4.40
阪神での通算成績:39試 8勝13敗 防3.80(在籍3年)
▼ 2010年オフ
小林宏之(ロッテ→阪神)
移籍初年度の成績:42試 1勝5敗21ホールド 防3.00
阪神での通算成績:42試 1勝5敗21ホールド 防3.00(在籍2年)
▼ 2015年オフ
高橋聡文(中日→阪神)
移籍初年度の成績:54試 3勝1敗20ホールド 防3.76
阪神での通算成績:130試 9勝1敗1セーブ・51ホールド 防2.80(在籍3年)
山沖之彦、星野伸之という元オリックス組は、ほとんど数字を残せずに終わった。なかでも山沖は、阪神移籍後に一度も一軍に昇格しないままその年に引退。いまだにFA最大の失敗例として名前が挙がるほどだ。
リリーフ投手に目を移すと、現役の高橋聡文が気を吐いているが、移籍3年目となった2018年シーズンは故障のためわずか15登板に終わった。来季5月で36歳という年齢を考えても、これ以上の上積みは考えにくく、左肩の状態次第ではさらなる成績下降も考えられる。
こうして過去の例を振り返ると、投手にとって阪神へのFA移籍はいい結果が出ているとは言えない。西はそんなジンクスを跳ね返す活躍を見せることができるか。2019年の西に注目してみたい。
文=福嶌弘(ふくしま・ひろし)