コラム 2018.12.17. 18:20

猛虎は猫で勝負する?

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阪神・矢野燿大監督(C)KYODO NEWS IMAGES

白球つれづれ2018~第42回・矢野タイガース


 17年ぶりにセリーグの最下位に沈んだ阪神が新監督・矢野燿大の下で逆襲の機をうかがっている。

 今月に入ってオリックスからFA宣言していた西勇輝を、また中日と契約条件で折り合わず退団していたオネルキ・ガルシアを獲得。先発投手陣の厚みが増したことは朗報と言えるだろう。中でもガルシアは昨季13勝9敗で中日の勝ち頭だけでなく防御率2.99もリーグ4位の安定感、ランディ・メッセンジャーと並ぶエース格にまで期待できる。

 恥ずかしながらの懺悔をする。実はシーズン前の順位予想で阪神を優勝と占った。パ・リーグは西武として大的中だったが、こちらは大外し。前年2位に躍進した猛虎軍団には、さらに躍進を期待される材料が揃っていた。当時の監督である金本知憲が育成に力を注いだ中谷将大、高山俊、大山悠輔ら伸び盛りのスター候補はいる。そこへ3億4000万円の巨額をはたいて獲得した助っ人のウィリン・ロサリオはキャンプ時点で40発も夢じゃない勢い。ここ数年くすぶっている藤浪晋太郎だって復活するだろう。「上がり幅」を最も予感させるチームが阪神だった。

 ところが、ふたを開けてみれば誤算の連続。期待の若手たちは故障や力量不足で早々と一軍から姿を消す。本塁打王候補と目されたロサリオは外角の変化球を全く打てずに欠陥品を暴露。投手陣こそ巨人に次ぐリーグ2位のチーム防御率を残したが、ともかくチャンスに打てない、一発は期待できないピストル打線で奈落の底に沈んだ。

 このよもやの転落劇の要因はいくつもあったが、中でも指摘されるのが指揮官・金本の独りよがり説である。2016年には「超変革」をキャッチフレーズに若手育成路線に舵を切った。しかし、一方で阪神という人気球団は常にファンとマスコミの厳しい目にさらされている。若手中心のオーダーを組んでも結果が出なければ叩かれる。今度は指揮官が我慢できなくなる。さらに矢野や片岡篤史らの「お友達内閣」では監督に意見を言える空気も年々薄らいでいったと証言する向きもある。最後は最下位に甲子園で39敗は球団史上ワースト、空中分解の末に金本は裸の王様で退陣の憂き目を見た。


超変革の完結には…


 一方で、一・二軍の意思疎通をよりよくするため二軍監督に回った矢野は、いきなりウエスタン・リーグで優勝を勝ち取った。そんなチーム掌握術も評価されて金本の後任の座がまわってくるのだから、運命は時として悪戯もする。この矢野軍団の勝因は機動力と言っても過言ではない。走りに走ってウエスタンでの年間盗塁数は163個(115試合)。レベルの差はあるものの、一軍でトップだった西武の132個(143試合)を大きく上回る。当然、矢野の来季の浮上プランには「走る虎」が描かれているはずだ。

 志半ばで退陣に追い込まれた金本だが、何人かの「チルドレン」も芽吹きつつある。梅野隆太郎と北條史也がレギュラーの座をつかみかけ、糸原健斗や植田海らもさらに飛躍が期待できる。だが惜しむらくはいずれも小兵な脇役タイプでチームの屋台骨を背負って立つ素材ではない。少なくとも今季の貧打と長距離砲不在を打開するには、新外国人と大山や中谷がクリーンアップを担っていかなければ「超変革」は完結しない。

 いつまでも福留孝介や糸井嘉男ら外様のベテランに頼っているようでは夢もない。脇役は機動力を前面に押し出して「猫」に徹しても中軸はやはり「猛虎」でなければならない。

 先日、DeNA監督のラミレスが来季のペナントレースを展望して「4チームくらいの激戦になるだろう」と語っている。リーグ3連覇の広島と大補強の巨人を眼中に入れたうえで「中日も与田さん(新監督)と伊東さん(新ヘッド格)が加わり強くなるだろう」と言及、そこに自チームを入れれば、ヤクルトと阪神は圏外?となる。

 猫のような俊敏さと虎の破壊力を兼ね備えたニュー阪神。さすがに2年連続で優勝予想する勇気はないが、藤浪のエース復活を条件に大化けの可能性は秘めたチームとして特注マークはつけておきたい。


文=荒川和夫(あらかわ・かずお)

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