2013年の上原のK/BBは11.22
このオフ、巨人から自由契約となったものの、再契約を果たした上原浩治。10月におこなった左膝の手術からの再起を目指し、リハビリの真っ最中にある。かつて、その上原の活躍によって日本の野球ファンに広く知られることになったのが「K/BB」という指標だ。
「K/BB」とは「奪三振数÷与四球数」で表される、与四球ひとつあたりの奪三振数。与四球と奪三振という、球場のちがいや味方の守備の影響を受けない数値で割り出されるため、投手個人の能力を測るために有効だとされる。
奪三振が多いほど、あるいは与四球が少ないほど、その数字は大きくなり、一般的に「3.50」を超えれば優秀とされる。ところが、上原がワールドシリーズで胴上げ投手となったレッドソックス時代の2013年、そのK/BBは「11.22(奪三振101、与四球9)」という常識破りの数字だった。
ちなみに2018年シーズンのK/BBランキングはどんなものだったのか。下記は、50投球回以上を記録した12球団113人の投手におけるK/BBトップ10である。
【2018年K/BBトップ10】
※50投球回以上
※K/BB<奪三振/与四球|奪三振率/与四球率|防御率|被打率>
6.63 塩見貴洋(楽) 53/8 | 6.98/1.05|防3.56|被打.273
5.80 有原航平(日) 87/15| 7.08/1.22|防4.55|被打.281
5.48 岸 孝之(楽) 159/29| 9.00/1.64|防2.72|被打.218
5.42 桑原謙太朗(神) 65/12|10.26/1.89|防2.68|被打.240
5.41 菅野智之(巨) 200/37| 8.91/1.65|防2.14|被打.221
4.94 秋山拓巳(神) 89/18| 7.63/1.54|防3.86|被打.272
4.19 パットン(De) 67/16|10.77/2.57|防2.57|被打.251
4.13 石山泰稚(ヤ) 62/15| 7.57/1.83|防2.08|被打.228
3.97 上沢直之(日) 151/38| 8.22/2.07|防3.16|被打.237
3.95 アルバース(オ) 83/21| 6.55/1.66|防3.08|被打.245
塩見、有原、秋山に求められる総合力
見事1位に輝いたのは、もともと四球が少ないことで知られる塩見貴洋(楽天)。その塩見も含め、トップ10入りした有原航平(日本ハム)、秋山拓巳(阪神)の3人は、50投球回以上を記録した113人の投手のなかにおける与四球率が低い上位3人でもある。逆に、桑原謙太朗(阪神)、パットン(DeNA)は奪三振の多さでK/BBを押し上げた。
ただ、塩見、有原、秋山の3人は防御率では3点台後半以上。被打率もそろって.270以上と、その数値の高さが目を引く。与四球は少ないに越したことはないが、結果的に打たれる、失点するというケースが多いということは、ストライクゾーンで勝負して打たれている、勝負球が甘い、決め球になるボールがないなど、さまざまな要因が考えられるだろう。
その点、岸孝之(楽天)、菅野智之(巨人)、石山泰稚(ヤクルト)の場合は、優秀なK/BBもさることながら、被打率は.220前後で防御率は2点台。投手としての完成度の高さを感じさせる。K/BB上位の塩見、有原、秋山が自らの弱点をいかに克服し、高い総合力を身につけられるか。新シーズン開幕までの進化に期待しよう。
文=清家茂樹(せいけ・しげき)