昨季はセ・パ合わせて11人
“野球の華”とも呼ばれる本塁打。ファンが野球観戦で楽しみにしているポイントのひとつであり、選手としては一人でチームに得点をもたらせるだけでなく、打てばゆっくりとダイヤモンドを回る権利が与えられ、球場中の声援を一身に浴びることができる。
その放物線で我々に夢を見せてくれるのが“ホームランバッター”。明確な基準はないが、長距離砲と呼ばれるひとつの目安になるのが「シーズン30本塁打」というラインだろう。2018年はセ・パ合わせて11人が達成。平均すると1チームに1人いるかどうか、ということになり、簡単にクリアできるものでないことが分かる。
ちなみに、昨季30本塁打を放った選手のチームごとの内訳は以下の通り。
▼ 2人
西武(山川・浅村)
ソフトバンク(柳田・松田)
広島(丸・鈴木)
ヤクルト(バレンティン・山田)
DeNA(ソト・筒香)
▼ 1人
巨人(岡本)
先ほどは“平均すると~”と言ったが、見てみると30本をクリアした選手は6球団に集中している。半数のチームでは30発以上を記録する長距離砲が不在だった。
7チームしかない“30発カルテット”
昨年は多くても1球団に2人だったが、過去には「30発カルテット」が誕生したチームもあった。文字通り、同一チームで4人がシーズン30本塁打以上を記録しているという状態を言う。
振り返ってみると、長いプロ野球の歴史のなかでも過去に7チームしか達成していない偉業だった。直近でも2010年の巨人が最後となっており、ここまで8年間出ていない。
【過去の30本塁打カルテット】
▼ 1978年・広島
44本:山本浩二
40本:エイドリアン・ギャレット
33本:ジム・ライトル
30本:衣笠祥雄
▼ 1984年・中日
37本:宇野勝
34本:谷沢健一
31本:ケン・モッカ
30本:大島康徳
▼ 1985年・阪神
54本:ランディ・バース
40本:掛布雅之
35本:岡田彰布
34本:真弓明信
▼ 2001年・ダイエー
44本:小久保裕紀
36本:松中信彦
31本:城島健司
30本:井口資仁
▼ 2004年・巨人
45本:タフィ・ローズ
41本:小久保裕紀
33本:阿部慎之助
30本:高橋由伸
▼ 2007年・巨人
35本:高橋由伸
33本:阿部慎之助
31本:小笠原道大
30本:イ・スンヨプ
▼ 2010年・巨人
49本:アレックス・ラミレス
44本:阿部慎之助
34本:小笠原道大
31本:坂本勇人
今季期待がかかるチームと言えば、DeNAの名前が挙がる。
昨季はネフタリ・ソト(41本)と筒香嘉智(38本)の2人が30本塁打超えを果たしたが、さらに宮崎敏郎が28本で続き、ホセ・ロペスも26本と惜しくも30発の大台に届かなかった選手が2人もいた。特にロペスは度重なる故障で30試合以上を欠場しており、健康な体でフル出場できれば30発には届いていただろう。
また、昨年の30発超えが岡本和真ただひとりだった巨人にもチャンスがありそうだ。何と言っても昨季39本塁打の丸佳浩が広島から加わり、メジャー通算122試合で24本塁打をマークしたクリスチャン・ビヤヌエバという大砲候補も加わった。ほかにも復活を期すかつての本塁打王アレックス・ゲレーロに、坂本勇人といったところも候補として挙がる。歯車がかみ合えば、本塁打数は飛躍的に増えるだろう。
パ・リーグでは、ソフトバンクに大きな可能性を感じる。昨季は柳田悠岐(36本)と松田宣浩(32本)の2人が30本塁打超えを果たしているが、さらにアルフレド・デスパイネが29本で1本足りず、上林誠知も22本で20本台に乗せていた。FAで浅村栄斗が獲得できていれば、「30発×5人」というところまで狙えたかもしれない陣容だ。
果たして、今年はどこかで「30発カルテット」の誕生なるか……。注目して見ていきたい。
文=八木遊(やぎ・ゆう)