新・代打の神様!
レギュラー組に好打者がそろっているに越したことはない。ただ、代打を得意とし、「ここぞ」という場面で勝負強さを見せてくれる打者も、チームやファンにとっては頼もしい存在だ。特に、投手が打席に立ち、パ・リーグより代打を送る機会が多いセ・リーグのチームにとっては、より重要な存在となる。
つい先日、大腸がんの手術を受けたことを公表した原口文仁(阪神)はまさにそういう打者だ。昨季の原口は、「代打の神様」の先輩・桧山進次郎が2008年にマークした代打安打数の球団記録である「23」に並んだ。しかも、代打打率ではその年の桧山の「.295」をはるかに上回り、「.404」という驚異的な数字を残している。
また、打数の半数以上がプレッシャーのかかる代打で記録したものながら、得点圏打率は「.455」。その勝負強さで度々ファンを沸かせた。レギュラーではないものの、その穴を埋めるのは容易ではない。最下位からの逆襲を狙う阪神としては、原口の早期復帰を待ち望んでいるところだろう。
西武を優勝に導いた“切り札”
代打で原口ほどの数字を残した選手はそうはいない。下記は昨季、代打で20打数以上を記録した選手における代打打率ランキングである。
▼ 2018年代打打率ランキング※代打打数20以上
.404(57-23):原口文仁(阪神)
.357(28-10):伏見寅威(オリックス)
.348(23- 8):福田秀平(ソフトバンク)
.333(21- 7):栗山 巧(西武)
.308(39-12):大城卓三(巨人)
.304(23- 7):桑原将志(DeNA)
.300(20- 6):枡田慎太郎(楽天)
.296(27- 8):長谷川勇也(ソフトバンク)
.289(38-11):畠山和洋(ヤクルト)
.286(28- 8):乙坂 智(DeNA)
.286(21- 6):下水流昂(広島)
トップはやはり原口。その後はパ・リーグの選手が上位に続く。なかでも栗山巧(西武)の活躍に注目したい。西武一筋18年目を迎えたベテランは、若手の台頭もあって2017年ころから代打起用も増えている。慣れない代打ながら、2017年には「.313」、昨季は「.333」と高打率を残し、まさにチームにとっての“切り札”となっている。
原口や栗山の他、このランキングに名を連ねるメンバーの多くは、名前がコールされるだけで球場を沸かせる選手たちだろう。勝ち越しや得点差を広げる、あるいは逆襲の口火を切る一打を期待してファンは熱い声援を送る。
優勝を狙えるような強いチームには、チームとファンが一体となっていく独特の空気があるもの。その空気をつくるためには、ファンの熱い声援を受けて一振りの勝負にかける「切り札」も重要な役割を担っていることだろう。原口の復帰を待ちながら、切り札たちの活躍にも注目したい。
文=清家茂樹(せいけ・しげき)