最も勝利に貢献した日本人野手は…?
メジャーリーグには選手の貢献度を測る指標が幾つかあるが、よく目にするのがWAR(Wins Above Replacement)という指標である。WARとは、複雑な計算式が用いられ、その選手が代替可能な選手に比べてどれくらい勝利を生み出すかを示す。
WARの計算式には幾つか種類があるが、今回はMLB記録サイトの代表格「Baseball Reference」版から、これまでの日本人野手が記録したシーズンWARのトップ20を紹介しよう。
▼ 日本人野手のシーズンWARトップ20
2位 7.7 イチロー(2001年/マリナーズ/27歳)
3位 5.8 イチロー(2007年/マリナーズ/33歳)
4位 5.6 イチロー(2003年/マリナーズ/29歳)
5位 5.4 イチロー(2008年/マリナーズ/34歳)
6位 5.3 イチロー(2006年/マリナーズ/32歳)
7位 5.0 松井秀喜(2004年/ヤンキース/30歳)
8位 4.7 イチロー(2009年/マリナーズ/35歳)
9位 4.5 松井秀喜(2005年/ヤンキース/31歳)
10位 4.1 松井秀喜(2007年/ヤンキース/33歳)
11位 3.9 イチロー(2005年/マリナーズ/31歳)
12位 3.7 イチロー(2010年/マリナーズ/36歳)
13位 3.5 イチロー(2002年/マリナーズ/28歳)
14位 3.4 松井稼頭央(2007年/ロッキーズ/31歳)
15位 3.2 青木宣親(2012年/ブリュワーズ/30歳)
16位 3.1 岩村明憲(2008年/レイズ/29歳)
17位 2.9 青木宣親(2013年/ブリュワーズ/31歳)
18位 2.8 井口資仁(2005年/ホワイトソックス/30歳)
19位 2.7 大谷翔平(2018年/エンゼルス/23歳)
20位 2.7 松井秀喜(2009年/ヤンキース/35歳)
※NPBを経験した選手
上位6位までをイチローが占めたが、その中でも2004年シーズンのWARが突出している。262安打を放ったあのエピックシーズンだ。
この年のマリナーズは地区最下位に終わったが、イチローが孤軍奮闘の働きを見せ、シアトルを盛り上げた。WARは一般的に8.0以上でMVP級とされるが、日本人野手でこの大台を突破したのは04年のイチローだけである。
さらに、野手歴代2位にもイチローが登場。MVPと新人王をダブル受賞したメジャー移籍1年目の大活躍は04年に匹敵する印象度だった。
7位にようやく松井秀喜の名前が登場。262安打を記録したイチローの陰に隠れてしまったが、松井にとってのベストシーズンも04年だった。その年がメジャー2年目の松井は、メジャー生活10シーズンで唯一30本塁打(31本)を達成。OPSは.912という高い数字をたたき出した。
そのイチローと松井が上位13位までを独占。この2人がレギュラーとして活躍した2000年代はまさに日本人のメジャーファンにとって忘れがたい時代だったといえるだろう。
ワールドシリーズ進出に貢献
14位以下になると、松井稼頭央や岩村明憲、井口資仁という内野手3人の名前も。いずれもメジャーでは主に二塁手を務めた。興味深いのは、いずれもトップ20には1度しか名前が出ないが、そのシーズンに所属チームがワールドシリーズに進出している点だ。3人は、メジャーでの自己ベストシーズンに世界一を決める最高の舞台でプレーしていたのである。
そして、今も現役の青木宣親が15位と17位に登場。メジャー6シーズンで7チームを渡り歩いたが、自己ベストは移籍1年目。イチロー、松井と同じく30歳のシーズンだった。
青木がメジャーに移籍した2012年当時は日本人野手に対する評価が落ち始めたころ。ブリュワーズがポスティングシステムで交渉権を獲得したが、ヤクルトで首位打者3度の実績を誇る青木に「入団テスト」を課すなど、移籍当時の評価は決して高くなかった。しかし、青木はその低評価を覆し、見事レギュラーをつかみ取ると、昨季ヤクルトに復帰するまでメジャーで安定した成績を残し、ワールドシリーズも経験した。
最後に、大谷が19位に登場。二刀流で臨んだメジャー1年目の昨季は、打者としてWAR2.7という数字を残した(投手としてもWAR1.2を記録)。今季は打者一本で昨季以上の成績が期待されるが、まだ24歳と若い。選手としてのピークはまだ先だろう。いずれ全盛期のイチローに匹敵するWARをたたき出す日が来るのだろうか。
文=八木遊(やぎ・ゆう)