試合を作れない先発投手
今年のベイスターズ先発陣がひと味違う。昨年とは明らかに違う。
2018年のDeNAで規定投球回数(143回)を超えたのは、「154回」の東克樹のみだった。チーム2位は「94.2回」の濱口遥大。つまり100イニング以上投げたピッチャーは、東ひとりということになる。
先発陣の平均投球回数は「5.2回」で、東を除くと「4.9回」にまで下がる。DeNAのクオリティースタート(先発投手が6イニング以上を投げて、自責点を「3」以内に抑えること)率は「31.47%」で12球団ワーストだった。ちなみに11位のヤクルトで「40.56%」。いかに先発投手が試合を作れていなかったかがわかる数字だ。
昨年とは異なる試合展開
もちろん、まだシーズンは始まったばかりだが、今年は少し様子が違う。
特に象徴的だったのが次の2試合。1つが本拠地に中日を迎えた3月29日の開幕戦、0-0の7回一死という状況で打席が回ってきた先発の今永昇太に代打を出さず、そのまま打席に送った。なお、この時点で投球数は105球を数えていた。結局、次の8回まで投げ切りトータル120球で役目を終え、ダイレクトにクローザーの山崎康晃にバトンを渡すことに成功。開幕投手の大役を、勝利で飾った。
もう1試合は、4月10日の阪神戦。先発の濱口遥大は、8回まで無失点ピッチングを続け、被安打は1本のみ。しかし四球は7つを数え、投球数は125球。8回に二死満塁のピンチを切り抜けた直後だったが、9回も打席に立った。結果、阪神の中軸を三者凡退におさえ、136球の熱投で完封勝利を飾った。
いずれも去年までのスタイルであれば、100球を超えたあたりで交代を告げられてもおかしくないケースだ。
その他にも、ドラフト1位ルーキー・上茶谷大河のデビュー戦となった4月2日のヤクルト戦で、1点リードで迎えた6回の打席に代打を送らず、次の7回まで投げ切らせた。9日のタイガース戦でも6回を投げ切り、2試合連続でクオリティースタートを記録している。
三浦コーチが掲げる先発改革
「平均1イニング以上はのばそうぜ」
今年から投手コーチに就任した“番長”こと、三浦大輔コーチは、先発投手陣に課題を課した。しかもその方法は「各自が考える」とのこと。自覚を促すため、あえて指導は控えた。「先発する以上は行けるところまで投げる。1イニングでも長く」。現役時代、先発完投にこだわった自らのポリシーは、立場を変えても変わらない。
もちろん、その先には“チーム”がある。「去年は60試合、70試合、登板したピッチャーもいた。ブルペンの登板過多のことも考えた」と、投手陣全体のバランスを考慮。その結果が、4月12日時点でクオリティースタート率「53.85%」、平均投球回数「5.8回」、完封勝利「2回」という数字に表れている。
「先発とリリーフが助け合っていけるように」
まだ始まったばかりの長いペナントレース。三浦コーチの“番長イズム”がどこまで浸透し、今季終盤のチームにどのような影響を与えるのか――。その成果を楽しみに待ちたい。
取材・文=萩原孝弘(はぎわら・たかひろ)