昨季から一転
楽天は25日、延長12回の死闘の末、惜しくも日本ハムに敗れた。しかし今季は、ここまで13勝8敗1分という好成績でパ・リーグの首位に立っている。
今季の楽天は、エースの則本昂大が3月に右肘の手術を受け、前半戦の復帰が絶望的。さらに今季の開幕投手を務めた岸孝之がその試合で右膝を故障。その後、今週の復帰戦を回避するなど、エース格2人を欠く苦しい台所事情だ。
それでも楽天が首位に立っている要因の1つに、守護神・松井裕樹の存在が挙げられる。今季は、ここまでチーム22試合の半数以上にあたる14試合に登板。8セーブ、4ホールドを記録し、防御率は0.60と安定している。
プロ2年目から“守護神”として活躍している松井裕樹だが、プロ入り後は1年ごとに“好調”と“不調”を繰り返している。高卒1年目の2014年は先発で17試合、リリーフで10試合に登板。4勝8敗、防御率3.80と、高卒ルーキーとしては及第点以上の成績を残した。
しかし松井がその存在感を見せたのは2年目の15年。この年は、大久保元博監督(当時)が松井を抑えの切り札に抜擢すると、63試合で防御率0.87、33セーブという圧巻の成績を残した。その後も偶数年にやや数字を落とし、奇数年は無双の活躍を見せている。1年目から今季(25日現在)までの主な成績は以下の通りだ。
▼ 松井裕樹の年度別投手成績
14年:27試合 4勝8敗 0セーブ、 3ホールド、防御率3.80
15年:63試合 3勝2敗33セーブ、12ホールド、防御率0.87
16年:58試合 1勝4敗30セーブ、10ホールド、防御率3.32
17年:52試合 3勝3敗33セーブ、 5ホールド、防御率1.20
18年:53試合 5勝8敗 5セーブ、11ホールド、防御率3.65
19年:14試合 0勝0敗 8セーブ、 4ホールド、防御率0.60
特に防御率に注目すると一目瞭然だが、偶数年に比べ奇数年は圧倒的な成績を残している。奇数年の今季は再び開幕からセーブを荒稼ぎ。不振に喘いだ昨季を上回るセーブ数を挙げ、課題の制球面にも不安はなく、投球の内容は文句なしである。
隔年で防御率に波がある松井だが、23歳左腕のすごいところは、数字を落とした年でもしっかり防御率3点台を維持しているところ。ちょっとした炎上でも大きく防御率が悪化するリリーバーとしては驚異的と言えるだろう。ちなみに、9イニングを投げた際にいくつ三振を奪うかを表す奪三振率は、驚異の「15.60」。先発陣とは投球回数が異なるため一概に比較はできないが、15奪三振以上を記録している投手の中では断トツの数字だ。
今季もここまで僅か2失点(自責点は1)で防御率は0点台。これを維持するのは簡単ではないが、松井なら各部門で自己ベストを更新する可能性も十分にある。
シーズンを上位で終わるためには、負け試合をいかに拾うか、そして勝てる試合を確実に勝っていくことが重要になる。昨季最下位に終わった楽天の巻き返しに、松井の活躍は欠かせない。
文=八木遊(やぎ・ゆう)