7番・大城、8番・山本の活躍で巨人が連勝
巨人の下位打線が好調だ。4月27日のDeNA戦では、腰痛によって戦線離脱した吉川尚輝の「代役」、山本泰寛が2安打2打点の活躍。2回、外角低めのスライダーをうまく拾って中堅前に運ぶ先制打を放つと、4回には内角直球にバットを折られながらも三遊間を抜くしぶとい適時打でチームに3点目をもたらした。
その4回、山本の前の打席に立ったのが大城卓三。高く浮いたフォークを逃さずバットを振り抜くと、痛烈な打球は二遊間を破る適時打となった。7番・大城、8番・山本の活躍で、チームは5-4の接戦をものにした。そのふたりは翌4月28日のDeNA戦でも同じ打順で先発し好調ぶりを披露。そろって3打数1安打1四球の成績を残し、大城の1安打は2試合連続での適時打となった。
ここにきて、開幕から打撃好調の小林誠司に加えて長打力に定評がある大城にあたりが出てきたこと、先頭打者を務めていた吉川とはちがって7番、8番に起用される山本が吉川の離脱を感じさせない働きをしていることで、逆に巨人の下位打線の迫力が増したように思える。
DH制のないセ・リーグの場合、投手に加えて7番、8番打者まで打撃にそれほど期待できないとなると、対戦投手からすればくみしやすい相手になる。逆に、下位打線まで気を抜けないとなれば、対戦投手にとってこれほど嫌な相手もない。下位打線の成績は、チームの選手層の厚みや打線のつながり、引いてはチームの総合力を表すひとつの指標となる。
そこで、セ・リーグ6球団における先発7番〜9番打者のここまでの打撃成績を見てみたい。
【セ6球団先発7〜9番打撃成績】
出塁率 本塁打 打点 三振
巨人 24試 打率.243/出塁率.293 3本 16点 46三振
ヤクルト 26試 打率.221/出塁率.282 7本 18点 57三振
中日 24試 打率.242/出塁率.279 3本 16点 56三振
広島 25試 打率.207/出塁率.292 3本 13点 60三振
阪神 26試 打率.242/出塁率.309 2本 19点 60三振
DeNA 25試 打率.214/出塁率.276 2本 15点 48三振
DH制がないセ・リーグならではの面白さ
打率トップは「.243」の巨人。これは、巨人の打順別成績における先発8番打者の打率が「.341」という数字を記録し、全体を引き上げていることに起因している。この先発8番打者の高い打率は、先述の小林、山本の好調による数字といえるだろう。また、三振が少ないことも巨人の特徴と見ることができる。
一方、最低打率を記録してしまったのが広島。打順別成績では先発7番打者、8番打者はそれぞれ打率.282、.227と決して極端に低いというわけではない。ただ、先発9番、つまり先発投手がここまで1安打しか記録できておらず、打順別成績で打率.025という数字が足を引っ張っているようだ。もちろん、打撃は投手本来の役割ではないかもしれない。とはいえ、さすがに寂しい数字といえる。
逆に、先発9番打者の打率がもっとも高いのはヤクルトの.146。昨季、「8番・投手」という打順を組んでいたDeNAも含めて、今季はここまで全球団が先発投手は9番としているため、この数字もすべて先発投手による打撃成績だ。ヤクルトの先発投手たちはここまで48打数7安打。しかも、下位打線での7本塁打という数字は神宮球場の狭さを差し引いても群を抜いている。打撃力がウリのチームらしく、下位打線まで油断ならない打線といえよう。
また、出塁率が唯一3割を超えたのが阪神。これは梅野隆太郎が牽引した数字だろう。その梅野は4月28日の中日戦でも2安打を放ち、まだまだその勢いは衰えそうもない。ただ、その好調さゆえ、最近は6番で先発することも増えてきた。阪神の7番以降が「怖い下位打線」になるかどうかは、梅野に代わって下位打線を務める選手たちにかかっている。
DH制のないセ・リーグの場合、下位打線に回ると見る側のファンもどうしても少し気を抜いて観戦してしまいがちだ。だが、逆に投手に打順が回るからこそ、なんとかして1点をもぎ取ろうとする各球団のさまざまな作戦を見られる一面もある。そんな下位打線の面白さに注目していきたい。
※数字は4月28日終了時点
文=清家茂樹(せいけ・しげき)