史上3人目の大記録
2000年代のメジャーリーグを語り継ぐうえで欠かせない打者の一人がアルバート・プホルス(エンゼルス)だ。39歳で迎えた今季も先発出場した試合はすべてクリーンアップを務めるなど、エンゼルス打線を引っ張っている。
しかし、今季開幕からの成績を見ると寂しい数字が並ぶ。現地時間4月29日の試合終了時点で26試合に出場、打率は.230、4本塁打で15打点。OPSは.744という成績だ。
そんななか、注目が集まっているのがプホルスの通算打点。偉大なスラッガーがメジャーの舞台で積み重ねた打点は「1997」を数え、史上3人目の2000打点達成は時間の問題だ。
話題を集めた大型契約
引退後は資格1年目での殿堂入りが確実視されているプホルス。イチローと同じ2001年にカージナルスでメジャーデビューを果たすと、1年目から3割30本100打点を軽々とクリア。ナ・リーグ新人王に輝き、MVP投票でも4位に食い込んだ。
その後も、2010年まで10年連続で3割30本100打点を記録。11年は惜しくも打率.299、99打点に終わり、快挙はついえたが、MVPに3度輝いた11年間のカージナルス時代に残したインパクトはすさまじかった。
そして、ワールドシリーズを制した11年オフにFAになると、カージナルスをはじめ、マーリンズなどとも交渉。最終的には当時メジャー史上2番目となる大型契約(10年総額2億5400万ドル)をエンゼルスと結んだ。マーリンズがエンゼルスを上回る金額を提示したとも言われているが、カージナルスのそれはエンゼルスを大きく下回っており、プホルスはセントルイスを離れる決断を下す。
プホルスは活躍の場をア・リーグに移し、32歳で迎えた移籍1年目。大型契約のプレッシャーからか、開幕から大不振に陥る。それでも最終的には打率.285、30本塁打、105打点まで成績を上げ、移籍1年目のシーズンを終えた。カージナルス時代に比べると地味な成績だったが、結果的に1年目の数字がエンゼルスでのキャリアイヤーとなり、カージナルス時代に残したような成績は一度も残せなかった。
デビューから11年目までにカージナルスがプホルスに支払った年俸の総額は約1億ドル。現在のレートに換算すると、約111億円となる。カージナルスは、1年あたり約10億円を支払った計算だ。一方のエンゼルスは2012年から契約期間の21年までの10年間で約2億4000万ドルを支払うことになる。カージナルスが11年間で支払った2.4倍にも上る。
もちろん、この10年ほどでメジャーリーグでは年俸が高騰。一概にエンゼルスの“投資”は失敗だったとは言えないが、得をしたのはどちらかといえば、カージナルスの一択だろう。両チームでの1打点あたりの年俸を比較すると一目瞭然だ。
カージナルスは、1打点あたり約7万8000ドル(約870万円)を支払い、エンゼルスは、昨季まで1打点あたり約23万4000ドル(約2600万円)支払っている。エンゼルスは、今季以降もさらに高い買い物をすることが決まっている。
近年、メジャーリーグでは10年以上の大型契約が見られるが、そのほとんどは20代の選手が対象だ。一方で30歳を過ぎると、どれだけ実績があっても年俸は低く見られる傾向にある。プホルスがFAでエンゼルスと大型契約を結んだのは32歳の時。メジャーでは、その時の教訓が生かされているのかもしれない。
文=八木遊(やぎ・ゆう)