話題を集めるのは“二世”選手も…
今季のメジャーリーグは、父親に元メジャーリーガーを持つ二世の若手選手が注目を浴びている。
代表格は、ブルージェイズのブラディミル・ゲレロJr(20歳)。同名の父はエンゼルスなどでプレーした強打者で、通算449本塁打を放って殿堂入りも果たしている。その息子のメジャー昇格前の注目度は、昨年の大谷翔平以上だった。しかし、4月下旬にメジャー昇格した後は、ここまで7試合に出場して打率.192。本塁打は0で打点は1つ。守備でも粗さが目立つなど、メジャーの壁にぶち当たっている。
他にも、パドレスのフェルナンド・タティスJr(20歳)がその実力を示している。同名の父親はカーディナルスなどでプレーし、通算113本塁打を放った名三塁手だった。息子は今季の開幕をメジャーで迎えると、遊撃手としてレギュラーに定着。打率はちょうど3割をキープしているが、4月下旬に足を負傷。現在は故障者リストに入っている。復帰すれば、主力選手としてチームを引っ張る存在になるだろう。
いま取り上げたゲレロやタティスといったところは10代の頃から大きな注目を集め、順調にメジャーへの階段を上ってきた、いわゆる「プロスペクト」である。一方で今季は、オールドルーキーの活躍も見逃せない。
30歳のルーキー投手が奮闘中
まずは、レッドソックスに所属するマーカス・ウォルデン(30歳)。2007年のドラフトでブルージェイズから9巡目で指名された男は、実に10年以上に及ぶ長いマイナー生活を経て、昨年4月に29歳でメジャーに初昇格。しかし、8試合に投げただけで5月上旬にマイナーに降格すると、その後は再昇格することなくシーズンを終えた。
30歳となって迎えた今季。それでも男は腐ることなくアピールを続け、4月上旬に11カ月ぶりとなるメジャー復帰。ロングリリーバーに近い役割でここまで11試合に投げ、チームトップの4勝を挙げている。防御率は1.65と秀逸で、今後は勝ちパターンでの登板も増えていきそうだ。
そしてもう一人、開幕から活躍を続けるオールドルーキーがダイヤモンドバックスのメリル・ケリー(30歳)も。こちらは高校卒業時(37巡目)と短大卒業時(22巡目)の2度、ドラフトを拒否したという経歴を持つ。その後、2010年のドラフトでレイズから8巡目で指名を受け、ようやくプロの世界へと入った。こちらも長い下積み時代を経験しており、2015年から18年の4シーズンは韓国プロ野球でもプレーしたという苦労人だ。
昨年12月にダイヤモンドバックスとマイナー契約を交わして5年ぶりに米国に戻ると、オープン戦でも結果を残して開幕メジャーの座をゲット。4月1日のメジャー初登板(初先発)で見事勝利を挙げるなど、ここまで6試合に先発して3勝2敗、防御率3.60と奮闘。ローテーション投手として役割をしっかりと果たしている。
ウォルデンとケリーはドラフトの指名順位からもわかる通り、決して将来を嘱望されて入ってきた選手というわけではない。しかし、長いマイナー生活や慣れない海外でのプレーなども経て、今季はメジャーの舞台で躍動している。
注目度では20代前半の若い選手たちに劣るが、今回取り上げたオールドルーキーの2人には新人王争いに食い込んでくるような活躍に期待したい。
文=八木遊(やぎ・ゆう)