白球つれづれ2019~第21回・松坂大輔への期待~
「軽率な行動、申し訳ありません。心を入れ替え野球に集中します」
中日の松坂大輔がリハビリ期間中のゴルフ姿を写真誌に撮られて謝罪に追い込まれた。5月の練習中に千葉のゴルフ場で友人らとプレーしていたものだが、世間に広く知られるところとなり、球団からペナルティーを受けた。
「休日のゴルフは禁止していないけれど、練習日はダメでしょう」と球団幹部もおかんむりだったが、この一件は野球選手とゴルフについて改めて問題提起する事にもなった。
今年の2月のキャンプ中、ファンとの接触で右肩炎症を起こして松坂は長期戦列離脱を余儀なくされた。現在はようやく本格投球練習を再開、フリー打撃への登板とファームでの実戦調整を経て6月にも一軍復帰の見込みだ。日頃は名古屋で調整をしているが、月に何度かはかかりつけのトレーナーに見てもらうために球団の許可を得て上京している。問題のゴルフは、そこでリハビリを受ける前に行ったものだが、自らの置かれた立場やチームへの影響を考えれば軽率のそしりは免れない。
ところが、この件に関して意外なところから発言が飛び出した。メジャーのカブスに所属するダルビッシュ有が日米のゴルフ観を自身のツィッターで発信。
「膝とか腰のケガならわかるけど肩ならゴルフくらいいいんじゃない? リフレッシュにもなるし。こっちの人は全然気にしていないですよね」
「嘘をついて治療に行かずならダメですが、治療の前後なら問題ない。そもそも日本はケガしている期間の球団内外のしばりがきつすぎます」
さらに、高名なスポーツライターも医師の話として「ゴルフは肩の故障への影響はほとんどない。むしろリハビリには適している」と今回の騒動への違和感を指摘している。
松坂大輔であるが故に
団体と規律を重んじる日本球界に対して、グラウンドの結果がすべてといってもいいメジャー流。選手の管理という部分では両国の差は大きい。だが、「故障、リハビリ中」という一点を除けば、シーズン中のゴルフも実は珍しいことではない。
毎日が試合と移動に追われるプロ野球選手だが、例外はある。先発投手たちである。特にベテランのゴルフ好きとなると、今のように中6日のローテーションなら、先発の翌日はほぼ完全休養、リフレッシュを兼ねてグリーン通いをする選手もいた。
その昔、野球選手の空き時間と言えば、麻雀が定番だった。しかもその頃は椅子に座る全自動の麻雀卓はないので、旅館の畳の上で雀卓を囲むことになる。すると、長時間、興じていると肩や腰に負担がかかり不健康そのもの。パチンコも似たようなもので、キャンプなどではいつしか「部屋でゴロゴロしているならゴルフの方がいい」となっていったのだ。
話はいささか脱線したが、松坂に戻る。メジャー時代から肩、肘の故障に悩まされてきた「平成の怪物」も今年の9月には39歳を迎える。日本球界復帰後もソフトバンク時代はリハビリの連続。中日に移籍した昨年、ようやく6勝をあげて光明を見出した。
しかし、その反面、いつ投げられるかわからない松坂のためにローテーションを崩される一部投手陣からは不満の声も上がったと聞く。これが三流投手なら写真誌もゴルフ場まで追いかけていないだろう。チームの期待、ファンの熱い思いを背負っているからこその松坂なのだ。正論であっても、ダルビッシュの意見は現状で日本の大多数の支持を得るとは思わない。
残された現役生活は決して長くない。スーパースターはファンの夢を壊してはいけない。反省の弁の次は、マウンドで答えを出すしかない。
文=荒川和夫(あらかわ・かずお)