コラム 2019.06.19. 22:00

幸運?不運?それとも実力? 数字でひもとく菊池雄星の1年目

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不振の原因は!?


 マリナーズの菊池雄星がリズムに乗れない。先発で登板した18日のロイヤルズ戦で5回を投げ、6失点。ここ5試合の成績は、0勝4敗、防御率10.35ともがき苦しんでいる。

 この1カ月間で防御率は「3.43」から「5.15」まで大きく悪化。不振の要因は幾つかあるが、やはり被本塁打の多さが気になる。ここまで両リーグワースト8位タイの17本塁打を許しているが、9イニング当たりの被本塁打率にすると「1.90」で、これは規定投球回数に到達した84投手中ワースト3位タイ。これだけ多くの本塁打を浴びれば5点台の防御率も致し方ない。

 ただし、被本塁打に関しては“幸運”な面も持ち合わせている。17本塁打のうち16本が走者なしという状況。投手にとって悪夢ともいえる本塁打だが、菊池はそのダメージを最小限に抑えているとも言える。しかし一方で“不運”な面も……。


マリナーズという不運!?


 打球の強さを3つに分ける「Soft%, Mid%, Hard%」(左から弱中強)という指標がある。今季の菊池は「Soft%」が両リーグ14位(規定到達84投手中)の20.2%。「Hard%」が両リーグ25位(同)の35.1%と、いずれもランキング的には比較的上位につけている。つまり菊池は、相手打者をうまく打ちとっているともいえるのだ。しかし、菊池の「BABIP(本塁打を除いた打球がヒットになる確率)」は「.311」と平均より悪く、リーグ64位(同)となっている。

 BABIPは3割を超えると“不運”とも言われているが、今季に限ってはマリナーズの守備が原因だろう。守備力の高いチームならアウトにしている際どい打球も、マリナーズの守備陣では安打となり、菊池の負担が増幅していると推測できる。もう少し守備力が“整っている”チームなら、菊池の成績もここまで悪くなっていないはずだ。

 菊池にとって“幸運”と“不運”の両面を見てきたが、その“実力”に疑問符がつき始めている。というのも、菊池にとって生命線ともいえる「フォーシーム」と「スライダー」という2つの球種、多くの空振りや三振を奪ってきた“武器”が通用していない。


制球力が仇に!?


 今季の全投球の約50%を占めるフォーシーム、いわゆる直球の奪空振り率(空振り数/スイング数)は「15.7%」で、メジャー平均の「21.8%」に遠く及ばない。ちなみに田中将大(ヤンキース)は「22.9%」、ダルビッシュ有(カブス)は「20.3%」である。そしてスライダーの奪空振り率も「27.1%」で、メジャー平均の「35.4%」、田中の「38.5%」、ダルビッシュの「38.9%」に大きく劣るのが現実だ。

 そして、菊池にとって仇となっているのが制球力だ。それも逆の意味で。菊池の今季のZone%(ストライクゾーンに投じられた割合)は、メジャー1位の「48.2%」。荒れ球のイメージもある菊池だが、今季は規定投球回数に達している84投手の中で最も高い確率でストライクゾーンにボールを投じている。しかし、その一方で“空振りを奪う確率が低い”ため、強打者ぞろいのメジャーでは、それが好結果には結びついていない。

 シーズンは、まもなく折り返し地点を迎えるが、菊池のメジャー1年目は想像以上に苦しいスタートとなった。果たして菊池はこの苦境をどのようにして乗り越えるのか、今後の活躍に期待を寄せたい。(※数字は現地時間18日現在のもの)


文=八木遊(やぎ・ゆう)

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