メジャー4年目の新星
NPBよりもひと足先に行われたMLBのオールスターゲームは、4-3でア・リーグが勝利。その試合で勝利投手に輝いたのが、2回から登板して1イニングを1安打無失点に抑えた田中将大(ヤンキース)だった。
ただし、今回取り上げるのは田中ではなく、田中から唯一の安打を放った男。メジャー4年目・26歳のジョシュ・ベル(パイレーツ)である。
193センチ・109キロの体躯を誇る大型スラッガーは、開幕から「4番・一塁」として出場。6月には月間打率.208という不調の時期もあったが、打率.302に加えて27本塁打はリーグ4位タイ、84打点は同1位とオールスター選手にふさわしい数字で前半戦を終えた。
今季は二塁打も多く、現時点でリーグ1位の30本を記録。3本の三塁打と合わせると、シーズン半ばですでに長打の数を60本まで伸ばしている。ナ・リーグの選手がオールスター前に長打数60に達するのは、実はベルが初めて(ア・リーグでは過去に7人が達成)。後半戦もこのペースを維持すれば、シーズン終了時には大台を超えて「109」になる計算だ。
“レジェンド”に負けず劣らずのハイペース
もちろん、このペースを維持することは簡単なことではないが、もし109本まで伸ばすことができれば、長いメジャーリーグの歴史でも3人目の快挙となる。
歴代1位は1921年のベーブ・ルース。実に年間119本の長打を放った。2位はルー・ゲーリッグで1927年に117本を記録。次いで2001年のバリー・ボンズと1930年のチャック・クラインが107本で並んでいる。2001年のボンズと言えば、あのシーズン最多“73本塁打”を達成した年である。今季のベルは、ルースやゲーリッグ、ボンズといった“レジェンド”に匹敵するペースで長打を量産していることになるのだ。
オールスター前に長打が60本と聞いてもあまりピンと来ない人も多いだろう。そこで、絶好調で前半戦を終えた大谷翔平(エンゼルス)と比較してみたい。
ご存じのように、大谷は今季開幕が1か月以上遅れた中でもサイクル安打を達成するなど、超ハイペースで長打を放っているイメージがあるだろう。二塁打9本、三塁打1本、そして本塁打は14本で、合計長打数は24本に上る。ベルとは打席数が大きく違うため、大谷の打席数をベルと同数と補正して計算すると、大谷の長打数は“42本”になる。すなわち、ベルは大谷の1.5倍近いペースで長打を放っているということだ。
シーズンはまだ折り返し地点を迎えたところ。歴史的ペースで長打を量産するベルは野球界のレジェンドに近づくことはできるのだろうか。
文=八木遊(やぎ・ゆう)