メジャーで戦う日本人スターターのいま
カブスのダルビッシュ有が現地時間15日のフィリーズ戦で7回無失点の好投。リリーフ陣が打ち込まれたため5勝目とはならなかったが、ここ数試合の投球内容は確実に良化してきており、シーズン序盤の不振から完全に脱却したと言っていいだろう。
一方、残りの日本人投手はというと、シーズン折り返しあたりから徐々に下降気味。前半戦の奮闘が認められてオールスター戦のマウンドにも登った田中将大(ヤンキース)は、浮き沈みの激しい安定感に欠いた投球が目立つ。シーズン防御率も4.64まで悪化しており、特にライバル球団であるレッドソックスに対しては2試合・4イニングで18失点と特にやられている。
前田健太(ドジャース)も田中と同様、シーズン序盤こそ安定した投球を見せていたが、6月以降は苦戦。防御率も4.12と日本人投手のなかでは良い方と言えるが、手放しで褒められる成績でもないというのが現状だ。
そして今季がメジャー1年目の菊池雄星(マリナーズ)もここに来て炎上続き。防御率は4人のなかで最も悪い5.56で、チームの先発の層がここまで薄くなければ、とっくに見切られていても不思議ではない。
4人が規定クリアなら史上最多
こうして振り返ってみると、今季の日本人先発投手は奮闘は見せているとはいえ、数字的にはやや物足りない印象。いずれも本来の実力を発揮することができていない。
それでも、この4人にはもうひとつの共通点がある。それは、「開幕から(ほぼ)ローテーションを守っている」ということ。その結果、全員に規定投球回到達の可能性がある。
メジャーリーグにおける規定投球回は「162」。現時点で137.2回の田中と、139回のダルビッシュの2人はほぼ確実だろう。ケガなく最後まで投げ続けることができれば、いずれ届くラインと言える。
残る2人も、今後のパフォーマンス次第でチャンスあり。菊池はここまで126.1回を投げており、現時点では規定投球回に届いている。前田はチーム123試合に対して122.1回とわずかに足りていないが、いずれもシーズン最後までローテーションを守ることができれば、クリアできる可能性は十分にある。
ちなみに、もし日本人投手4人が同時に規定投球回に達すれば、それは史上初の出来事。これまでは3人というのが最多だった。以下をご覧いただきたい。
▼ 日本人投手3人が規定投球回に達した年
1999年:野茂英雄・伊良部秀樹・吉井理人
2000年:野茂英雄・吉井理人・マック鈴木
2016年:岩隈久志・田中将大・前田健太
野茂が活躍した1999年・2000年は連続して3人が規定投球回をクリアしたものの、以降は空白の期間に。2016年にようやく3度目の3人規定到達がクリアされたが、4人となるとこれまで一度もなかった。
開幕から4人の日本人投手がローテーションを守っている今年は最大のチャンス。果たして、今季こそ4人そろっての規定投球回クリアとなるか。日本人スターターたちの奮起に期待がかかる。
【2019年MLB・日本人先発投手の成績】
▼ ダルビッシュ有(カブス)
25試(139.0回) 4勝6敗 防4.21
▼ 田中将大(ヤンキース)
24試(137.2回) 8勝6敗 防4.64
▼ 菊池雄星(マリナーズ)
25試(126.1回) 4勝8敗 防5.56
▼ 前田健太(ドジャース)
24試(122.1回) 8勝8敗 防4.12
文=八木遊(やぎ・ゆう)