3球団を渡り歩いたベテランがプロ14年目でFA権取得
レギュラーシーズンも残りあと数試合を残すのみとなり、クライマックスシリーズ進出争い以外の話題では、寂しさを感じさせるニュースが多い時期となった。メッセンジャー(阪神)、館山昌平、畠山和洋(ともにヤクルト)、赤松真人(広島)らベテランたちの引退会見のニュースがメディアをにぎわせている。
その一方で、しぶとく活躍しているベテランもいる。なかでも、渋いベテランらしさという点で注目したいのが藤岡好明(DeNA)だ。藤岡は現在34歳。チームでは35歳のロペスに次ぐ、日本人最年長だ。その藤岡の出場選手登録日数が9月14日に8年に達し、国内FA権の資格取得条件を満たした。2006年にプロ入りし、3球団を渡り歩きながら、じつに14年目でのFA権取得である。
もともとは2005年大学生・社会人ドラフト3巡目でJR九州からソフトバンクに入団した藤岡。ルーキーイヤーの活躍は鮮烈だった。2006年、新人のなかでは松田宣浩(ソフトバンク)とともに開幕一軍入りを果たし、3月26日のロッテ戦で一軍デビューすると、以降8試合連続で無失点を記録するなど、セットアッパーとして活躍。その年は当時のパ・リーグ新人投手最多登板記録となる62試合に登板し、リーグ2位の31ホールドポイントを記録している。
しかし、以降はケガや好不調の波もあり、シーズンによって登板試合数や成績にはムラが目立つようになる。2013年オフには鶴岡慎也(日本ハム)のFA移籍に伴う人的補償として日本ハムへと移籍。また、2016年にはシーズン開幕直後の3月30日に金銭トレードにより現在の所属球団であるDeNAへ移籍することとなった。
今季は32試合に登板して防御率1.86の好成績
ただ、日本ハム時代から昨季までの5年間における一軍登板試合はわずか46試合にとどまっていた。ところが、今季はここまで32試合に登板。防御率1.86という見事な数字を残している。しかし、それだけ多くの試合に登板している藤岡だが、今季の成績は1勝0敗1ホールド。そもそも、藤岡はプロ通算で333試合に登板していながら、セーブはプロ1年目に記録した「1」のみである。
クローザーとしてゲームを締めくくって万雷の拍手を浴びるわけでもない。勝利の方程式の一翼を担うわけでもない。たとえセーブもホールドもつかない場面であっても、回またぎであれワンポイントであれ、チームに求められる役割をしっかりと果たしてきた。
チームの後輩である今永昇太は、事あるごとに藤岡にアドバイスを求めていることを明かしている。ベテラン・藤岡はまさにDeNA投手陣の縁の下の力持ちといったところだろう。
FA権行使について問われた藤岡は、「権利どうこうと考えられる立場ではない」とし、「来年もプロ野球でできるように頑張りたい」と謙虚に語ったという。しかし、今季の奮闘を見れば、誰もが「まだまだやれる」と感じているはずだ。フレッシュな若手の台頭もうれしいものだが、藤岡のようなベテランの活躍もまた、ファンに大きな感動と勇気を与えてくれる。
※数字は9月21日終了時点
文=清家茂樹(せいけ・しげき)